バレンタインが終わり、街中は早くもホワイトデーに向けて色直しされていた。 まだ寒さの残る中、はゆっくり歩いている。 目についた店に入っては店内を見て回り、ため息をついて店を出る。 そんなことをゆうに一時間は繰り返していた。 「…はぁ、どうしよう」 そう呟いて、またため息をもらした。 仕事が休みである今日、は恋人へのバースデープレゼントを探しに来ていた。 今年は閏年で、周助の四年に一度の誕生日がある。 だからは特別な日にしたいと考えていた。 けれど、スポーツ店に行っても、洋服屋に行っても、花屋に行っても、彼に渡したいと思えるプレゼントが見つからずにいた。 気持ちを込めたプレゼントを贈りたい。 そう意気込みはあるものの、恋人の周助は何でも持っているような気がするし、彼と付き合い始めて五年目となると、何を贈ったら喜んでくれるかを考えてばかりで、すっかり空回りしていた。 「あと3日しかないのに…」 「何が?」 自分の呟きに返事があったことに驚き、は後ろを振り向いた。 黒い瞳に恋人の周助が映る。 驚いて声を出せずに瞬きを繰り返すに周助はクスッと笑う。 「そんなに驚いた?」 「驚くわよ」 そう言い返すと、周助は愉しそうに笑い出した。 「なんで笑うのよ!」 「いや。の反応が可愛いから。つい、ね」 周助は笑い足りないのか、口元を掌で押さえている。 彼はいつもこんな調子だ。 出逢った頃と――いや、出逢った頃よりエスカレートしているような気がする。 なんとなく悔しくて周助を睨み付けるが、上目遣いで睨んでも周助には全く効果がない。 逆に周助の理性を崩すことになるのだが、そのことにはいつまでたっても気がついていない。 最も周助はそんなのことが愛しくてたまらないのだけれど。 「ねえ、」 「なによ」 「まだ怒ってるの?」 「怒ってないわよ」 「そう?それならいいけど、ね」 まだ不機嫌そうな彼女にクスッと笑って、周助は柔らかい唇に掠めるだけのキスをする。 「仲直りのキス、ね。ホラ、行こう?」 そう言って周助はの細い手をとって指を絡めるように繋いで、ゆっくり歩き出した。 結局プレゼントの決まらないまま、その日は周助とデートをしては家に帰った。 Birthday gift is... 全身が映る鏡で服装をチェックする。 ホットカーラーで撒いてゆるめに仕上げたカールにおかしいところはない。 化粧はファンデーションをつけて、アイシャドウ、口紅だけと軽めに仕上げた。口紅の色は散々迷った挙げ句、以前つけた時に周助が似合うと言ってくれたレッドオレンジにした。 そして服は去年の誕生日に周助がプレゼントしてくれた、ブラウンのワンピースを選んだ。胸の下あたりに切り返しがついており、丈も膝丈で動きやすく、裾がふわっとなっている。けれど決して子供っぽくは見えず、細身のの身体のラインが綺麗に見える。しかもそのワンピースはのためにあつらえたように、彼女にぴったりだった。 「…周助って、やっぱりセンスいいわよね」 鏡に映る自分の姿を見ながらそう呟いた。 実はこのワンピースを着るのは始めてだった。 ――男が女に服をプレゼントするのは、それを脱がせるためなんだって。周助君もやるわね〜 いつだったか、誕生日プレゼントに周助からワンピースを贈られた話を親友にした時、そう言われた。 それを鵜呑みにする気はないけれど、無視することもできなくて、今日まで袖を通したことがなかった。 でも、やっぱりこれしかないかな、と思った。 出かける用意を済ませ、昨夜作った抹茶クリームのプチケーキを数個詰めた白い箱を手にして、は自宅のアパートを出た。 今年の春大学三年になる周助は実家を出て、の住むところから車で15分程の所で一人暮らしをしている。 自宅近くのバス停まで歩いて数分待つと、彼の家方面へ向かうバスがやってきた。 そのバスに乗り込んで、周助の家から歩いて5分程の所にある停留所でバスを降りた。 通り慣れた道をまるで初めて通る道のように緊張して歩くと、彼の住む場所へ辿り着いた。 一呼吸おいて、チャイムを鳴らす。 すると、が来るのを知っていたかのように、すぐに扉が開かれた。 部屋の主人がにっこりとに笑いかける。 「いらっしゃい、」 「ごめんね。ちょっと早く着いちゃった」 「かまわないよ。それに僕としてはその方が嬉しいしね」 そう言ったかと思うと、周助はの腕をグイッと引っ張り家の中へ引き込んだ。 扉が閉まる音がしたと同時に、細い身体は周助に抱き締められていた。 「こうしてゆっくり逢うのは久しぶりだよね」 「そうね。でも…」 「でも、何?何か不満でもあるの?」 「そうじゃなくて、ちょっと苦しいわ」 「あ、ごめんね。ちょっと欠乏症だったから」 そう言って、周助は悪戯っぽく笑った。 周助の部屋に通されたはベッドに腰を下ろした。 すると同じように周助もの隣に座った。 「周助、お誕生日おめでとう」 はケーキが入っている箱を差し出した。 周助はそれを受け取って嬉しそうに微笑む。 「ありがとう。これ、の手作りだよね」 「うん」 「あとで一緒に食べよう」 周助は箱をテーブルの上に置いた。 「それとね、もうひとつプレゼントがあるの。…はい」 言いながらは周助に両手を伸ばした。 「え?」 「…受け取って?」 頬を僅かに赤く染めてが言うと周助は意味が理解できたようで、彼は驚きに色素の薄い瞳を瞠った。 普段のからは想像できない大胆な行動に、周助も幾分が動揺したがそれをばれないように押し隠す。 「、そんなことされたら本気にとるよ?」 こんなに可愛く誘惑されては、本当に抱きたくなってしまう。 「いいの?」 確認するように訊くと、は耳までも赤く染めて頷く。 「本気にとって」 小さな声で言うに周助はクスッと笑う。 「喜んで受け取らせてもらうよ」 甘く熱い声で肯定して、周助はルージュがひかれた唇に自分のそれを重ねた。 唇を重ねたままをベッドに押し倒した。 舌を絡め取るように吸い上げ、呼吸さえ許さないような深いキスを繰り返しながら、周助はの背中に腕を回しワンピースのファスナーを下ろした。 名残惜し気に彼女の唇をゆっくり解放すると、銀色の雫がの唇からツツーッと滴り落ちた。 周助はその雫を指先で拭って、ワンピースを脱がせながら徐々に露になる白い肌に口付け、強く吸い上げていく。その間に、周助は器用に自分の衣服を脱いで、少しずつ裸になっていく。 首、鎖骨、胸のいたるところに赤い花を咲かせる度にの体は従順に反応する。 時々恥ずかしそうに漏れる甘い嬌声は周助の欲を煽る。 そうして細い体に所有のシルシを刻み付けながら、細い腰をたどって、太腿を撫でてから、指を下肢に這わせた。 「あっ…」 湿った下着の上から花弁の入口に軽く触れただけで、感度のいいの体がビクッと跳ねる。 その様に周助は嬉しそうに微笑む。 「、可愛い。もうこんなになって…」 「んっ…はぁ…ッ」 下着の中に指を潜ませ蜜壷の入口を軽くなぞると、甘い嬌声とともに細い身体が跳ねた。 「どうしたの?今日はいつもより敏感だね。まだここを愛撫してないのに」 言いながら、周助は小さめだが形のよい乳房を手におさめた。 強弱をつけて揉みながら、赤く色付く先端を指先で摘んで、クリッと刺激を与えた。 「っあ…あんッ」 「ほらね。いつもより感じてるよ」 「ふっ…ん…そな…っこと…ッ」 ない、と言いたかったが、言葉は最後まで口にできなかった。 一瞬のうちに下着は脱がされて、露になった秘部に周助の指が挿れられた。 「はぁ…っ…んぁっ」 「すごい濡れてるよ」 厭らしく水音をさせながら、の中は周助の長い指を咥えていく。 そんな淫らな自分が嫌で、はイヤイヤをするように頭を振った。 「しゅうっ…や…やァッ…っ」 「イヤなの?じゃあ、やめていいんだ?」 周助は意地悪くそう言って の黒い瞳を覗き込んだ。 するとは蒸気して赤く染まった頬を更に赤く染めて、頭を左右に振った。 それだけで周助には伝わったはずだが、彼はそれを許さなかった。 「ダメだよ。ちゃんと口で言って?」 言わないとあげないよ、と視線で訴えられ、は羞恥に黒い瞳から涙を零した。 「…ごめん。虐めたいわけじゃないから、泣かないで」 周助は瞳からこぼれ落ちる雫に唇を寄せて、それを舌で優しく拭い取った。 が甘えるように周助の首に腕を回して抱きつくと、彼の耳に震えた声が届く。 「おねが…い…しゅう、すけ…」 「うん。もう、焦らさないから」 そう言うと、中に挿れた指の数を増やし、の感じるところを引っ掻くようにして刺激を与えながら、抜き差しを繰り返した。 「あふっ…っん…ああんっ…そ…な…しちゃ…やだぁ」 「クスッ、おかしくなっちゃいそう?」 の乱れる姿に周助は満足そうに色素の薄い瞳を細める。 そのうちに周助の指を伝って掌から滴り落ちるほどに、蜜壷から愛液が溢れ出してシーツに染みをつくり始める。 の身体が小刻みに震えだし、彼女の眼界が近いのを感じ取ると、周助は叢に隠れる熟れた花芽をこすりあげた。 高い嬌声が上がり、白い体が弓なりに反れてベッドへ沈んだ。 周助はの中から指を引き抜くと、指に纏わりついた愛液を味わうように舌で拭った。 そんな彼の仕種を視界の端に捕えて、は恥ずかしさに黒い瞳を逸らす。 すると周助は。 「そんなに可愛い反応されると、我慢できないんだけど?」 「だって…っ…周助…がっ…」 荒い呼吸を零しながら言葉を紡ごうとするを周助は優しいキスで遮る。 「もう我慢も限界だよ…」 「…しゅ…すけ…っ」 「が欲しいんだ。 の中に入っていい?」 細い脚を割っての中心に熱くなった自身を押し当て、周助が訊いた。 が細い指先で恋人の唇をそっとなぞった。それを合図に、周助の楔が熱く熟れた中に挿れられる。 十分すぎるほどに潤ったそこは周助の熱い楔をすぐに根元まで飲み込んだ。 「…の中、すごく熱いね」 「んッ…しゅう…すけ…もっ…熱いッ」 「フフッ。…もっと熱くしてあげる」 周助はゆっくり動き出した。 「ふっ…ああっ…んくぅ…」 の中の感じるポイントを寸分の狂いもなく適確に攻めて、周助はを高みへ昇らせていく。 「あっん…っ…しゅう、すけぇ」 「…ッ…っ」 「んぅ…あっ…ああっ…ッ」 「ッ…愛してる」 周助の動きが次第に早くなっていく。 細い腰を抱き寄せて、強く深く楔を打ち付ける。 「ああっ…しゅ…うっ…しゅうすけっ」 「…っ」 「ふぅんっ…しゅ、すけぇっ…愛して…るッ…んぅ」 「僕も愛してる」 甘い嬌声を上げる唇を深いキスで塞いで、花園の最奥を先端で突き上げる。 「やああっ…ッ」 「くっ…もう、いっちゃいそうだね」 の強い締め付けに周助は柳眉を顰めた。 「ンッ…しゅうっ…もっ…ダメぇっ」 逞しい体に縋り付くようにしがみついて、が訴えた。 「いいよ。いかせてあげる」 周助は質量を増した楔を花園入口ギリギリまで引き抜いて、の最奥まで一気に強く突き上げた。 「ひぁっ…あああーーーっっ」 高い悲鳴を上げて、桜色に染まった肢体が仰け反った。 が意識を手放す瞬間楔を強く締め付けられ、周助は彼女の中に熱い激情を注ぎ込んだ。 目を覚ますと、心配そうに自分の顔を覗き込む周助の姿が瞳に映った。 「周助…」 「気がついた?があまりにも嬉しいことを言ってくれるから手加減できなかった。ごめんね?」 の前髪を愛おし気に梳いて額にキスをすると、彼女はふわりと微笑んだ。 「大丈夫。…周助」 「ん?なに?」 「大好きよ、周助」 「僕もが大好きだよ。誕生日を祝ってくれてありがとう」 周助は幸せそうに笑って、の柔らかな唇に甘いキスをした。 END BACK |