■沖田で転生パロ「ハロウィン」






あまーいあまいお菓子

くれなかったら悪戯、だよね?


::甘美なる笑顔::



10月31日、といえばハロウィン。というのは千鶴も分かっていた。分かっていたのに、今日は朝から講義が入っていてお菓子の準備をするのを忘れていた。この状態であの人に見つかるのはよくない、と千鶴の中で自分が必死に呼びかけている。

千鶴は大学のキャンパスの中を隠れるようにして歩いていた。

「・・・み、みつからないようにしないと・・・」
「誰に?」
「総司さんに・・・って、え!?」

千鶴の呟いた独り言にどこからか返って来た問い。思わずその問いに答えながら千鶴は驚いて声のした方を振り返る。そこにはにっこりと笑った総司が立っていた。

「なんで僕に見つかっちゃいけないのかな?」
「え、いや、その・・・」
「なんで?」

言わないと離してあげないよ?そう囁きながら総司は千鶴を腕の中に閉じ込める。

「総司さん・・・っ!!ここ大学で・・・!!」
「僕は気にしないよ。思い出してごらんよ、僕がそんな事気にした事今までにあった?今も、昔もね」

そう言われて、千鶴は思い出す。総司が人目を気にした事など昔の新選組の屯所内でも再び出会った今もなかった事を。寧ろ新選組だったあの頃はもっと酷かったように思う。土方や斎藤と話しているだけで不機嫌になりそのまま連れ去られるなんてことは日常茶飯事だった。そんなことを思い出して千鶴は項垂れる。

総司は変わっていない。今も、昔も。凄い事に見た目もほとんどが千鶴の記憶にあるあの頃と酷似、というかそのままだった。そして、なにかあるごとに千鶴をからかって遊ぶその性格も変わっていなかったから。だから千鶴は必死に総司から逃げていたのだ。見つかってあの言葉を言われてしまうとどうなるか分からない。

「で、さ。なんで僕から隠れてたのかな?」
「う・・・」

話がそれて逃げられるかと思った千鶴に悪魔の囁きが聞こえる。両手がしっかりと自分を抱き締めているその場からはどうやっても逃げることなど出来ないと察するのはそんな難しい事ではなかった。

「ほーら、言わないと此処で口付けるよ?」
「・・・・・実は・・・」

お菓子を忘れてたんです、そう告白しようとした千鶴の唇には総司の人差し指が押し当てられていて。千鶴は驚いて総司の顔を見上げた。

「ちょっとまった。えーっとね」

にっこり、まるでその音が聞こえるかのように笑った総司は千鶴が最も恐れていた言葉を口にした。

「Trick or Treat?」
「・・・っ!!」

思わず千鶴の身体に力が入る。それと同時に、どうして今日に限ってなにもお菓子を持っていない自分を千鶴は責めた。ハロウィン、それは昔は無かった行事だけれど今となってはそれを疑問に思う事も無く馴染んでいる。そして千鶴には総司がそのイベントを千鶴に堂々と悪戯できる日、として認識しているように思えてならなかった。

だから、今日だけは・・・!!と一週間前から大量のお菓子を買いこんでいたのにも関わらず忘れてきてしまった。
・・・と、いう毎年の行事になりつつある。

「ほら、お菓子をくれなきゃ悪戯だよ?」
「総司さん・・・」
「ん?」

楽しそうにすこしずつ千鶴との距離を詰めている総司に思わず千鶴の顔が朱に染まる。

「また忘れてきたの?千鶴、もしかして僕からの悪戯希望だったりするのかな?僕は大歓迎だけどね」
「違います・・・!!今年もちゃんと用意したんです!でも・・・また忘れてきてしまって・・・い、家に帰ればちゃんとありますから!!」
「今なかったら意味ないよ。悪戯決定、だね」

そう言ってちゅ、と軽くわざと音を立てて総司は千鶴に口付ける。何処からか女の子の黄色い悲鳴が聞こえてきて、千鶴はようやくそこが大学のキャンパス内だったことを思い出し、必死にその腕から逃れようともがく。ただでさえ、総司はその容姿からかとても女子からの人気は高い。千鶴と恋人同士だということは総司の行動で周知の事実と鳴っているが、それでも総司を想う者は少なくないのだ。

「そ、総司さん・・・!!」
「ん?だーめ。これも悪戯の内、だよ。さ、僕の家に行こうか」
「私まだ授業が・・・」
「僕が教えてあげるよ。手取り、足取り、ね。」

千鶴の手をとり、優しく口付けながら総司が笑った。その艶を含んだ笑顔に千鶴の心臓が激しく鼓動を繰り返す。

「総司、さん・・・」
「もう一回聞くよ。Trick or Treat?」
「・・・Trick」

顔を真赤染め、総司の胸に顔を埋めるようにして小さな声で答えを返す。あまりの恥ずかしさにどこかに穴があったら入りたいような気分になるが、それでも何処かで求めてる自分がいるのを感じてそれが更に千鶴の羞恥心を煽った。
そんな千鶴の様子に総司は目を細め、そしてその手を取り己の家の方向に歩き出す。

可愛くて、仕方が無い。あの頃も、今も。男装して新選組に飛び込んできた頃も、病気の自分を必死に介抱してくれたときも。許された時間が残り少ないと分かっていながら、傍で笑っていてくれた時も。そして今、この世界で再び出会えてからも可愛くて、愛おしくて仕方が無い。

「じゃ、甘い甘いお菓子をもらおうかな」
「・・・うー・・・」
「唸らないの。可愛いだけだよ?」
「総司さんの意地悪・・・」
「千鶴が可愛いからいけないんだよ。」


だから、そんな美味しそうな香りを纏って、そんな顔で僕を誘惑したお仕置き、だよ。















後書き。

突発。ものすごい突発。
ハロウィン当日になにもしないとか無理ってことで無理やり20分で仕上げた。支離滅裂すぎて自分馬鹿・・・。
そして初の転生パロ。なんでこんなことになったのかは俺が一番知りたいです(笑)
こんなのでよければハロウィン記念で11/8までフリー配布にします。
報告は任意ですが、してくれると嬉しいです・・・!!

では、HappyHalloween!


蒼夜


【境界線】 蒼夜 靱様よりハロウィン記念でフリーになっていた、沖田×千鶴の創作をいただきました。素敵な転生パロのお話をありがとうございますvv

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