answer -Marui ver-




「おっ!いいなこれ」
 ショーウィンドウケースに並んだそれを見て、彼女が喜びそうだと思った。
 ドーナツもチョコもどちらも嫌いではなかったはずだ。
「……いや、待てよ」
 買って帰り明日渡そうか、という自分の思考に待ったをかけた。
 この店のドーナツは種類も多いし、美味しい。
 けれど、どうせなら。
 このドーナツは買うよりも、自分で作るべきだろうと思った。
 そうだ。そうしよう。
 それがいい。
 悪くない考えだ、と頭の中で自画自賛し、丸井はダッシュで帰宅した。



 翌日の昼休み。
ー!…って、あれ?」
 彼女のクラスを訪れた丸井は、教室の中にの姿が見当たらず、首を傾げた。
「あれっ?ブン太じゃないか」
「おっ、幸村いいところに。知らねぇ?」
 丸井は後ろを振り返って訊ねた。
 適当に探して歩くよりも、と同じクラスの幸村が知っていればそのほうが早い。
「ああ。女子は家庭科だったから、少し待っていれば戻ると思うよ」
「そっか。サンキュ」
 幸村は片手を上げて丸井に応え、教室へ入っていった。
 教室のドアに背を預けて待つこと数分。

 廊下に彼女の姿を見つけて名を呼ぶと、気がついた彼女はぱたぱたと走ってきた。
「丸井くん」
、ちょっと手ぇ出してくんない?」
「えっ?手?」
 丸井はきょとんと首を傾げるの左手首を右手で持ち上げ、彼女の掌を上にし、そこに紙袋をぽんと置いた。
 は掌に置かれた紙袋を見、そして丸井を見上げた。
「これは?」
「開ければわかる」
 言われて、は紙袋を開け、中を覗いた。
「…ドーナツ?」
「ただのドーナツじゃないぜ」
「え?」
 視線を上げると楽しそうに笑っている丸井が瞳に映った。
 は再び紙袋へ視線を落とす。
 ホワイトチョコのかかったドーナツをよく見ると、形が丸くないことに気がついた。
「ハートの形してる…」
「なあ、どう?」
 昨日自分の頭の中で笑っていたは、現実にも笑ってくれるだろうか。
「可愛い。ハートの形のドーナツなんて初めて見たわ」
 は頬を緩ませて笑った。
 この笑顔が見たかった。
 作った甲斐あったぜ、と丸井は心の中でガッツポーズを作った。
「味も保証つきだぜ」
「わあ、楽しみ。ありがとう、丸井くん」
「いやいや。お前が喜んでくれんのならいくらでも作るって」
「これ、丸井くんの手作りなの?」
「そ。お前にやりたいなって思ったんだ」
「…嬉しい」
 緩く首を傾げてはにかんだ笑みを浮かべる彼女に、丸井は会心の笑みを浮かべた。




END


千春さんがTwitterでミスドにハートの形のドーナツがあったと呟いていらして、
”このキャラなら○○する”と言ってらしたのを、ドリームにしました。
初書き丸井君。千春さんが呟いていなかったら丸井君は書いてないですね。

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