answer -Saeki ver-





 昼休みの教室で、クラスの友人と机を向かい合わせて弁当を広げていた時だった。
 手にした箸が落ちないようにケースにしまい、は視線を上げた。
「どうしたの?佐伯くん」
 佐伯がのクラスに足を運ぶことは稀なので、なんの用事なのかと首を傾げた。
「ね、ちょっと手を出して」
「え?こう、でいいの?」
 は唐突な言葉に戸惑いつつ、掌を上にした右手を出した。
「うん。はい、これ」
 ぽん、と掌の上に紙袋が乗せられた。変わったライオンのイラストが入ったそれは、ドーナツショップのものだった。だから中身は押して知るべしだけれど、突然のことに驚いて思わず確認してしまう。
「ドーナツ?」
「ああ。開けてみて」
 は袋を開け、ドーナツを取り出す。
「わあ、ハートの形してる。可愛い〜」
 笑顔を零すに佐伯は満足そうな笑みを浮かべた。
「君ならそう言うと思った」
「佐伯くんミスドによく行くの?」
 も行くことがあるけれど、そう頻繁ではないから、こんな形のドーナツを売っているのは知らなかった。
「俺は結構常連かな」
「そうなんだ」
「今度一緒に行こうか」
「え、いいの?嬉しい」
 瞳を輝かせるに佐伯は笑って。
「じゃ、今度な」
「あ!ドーナツありがとう」
 踵を返しかけた佐伯に慌てて礼を言うと、爽やかな笑みが返された。
は優しい人が彼氏でいいわね」
「え?天根くんだって優しいでしょ」
「うん、でもドーナツは買ってこないと思うわ。それにもし買ってきても、ダジャレを言いながら渡されそう」
 の言葉には苦笑した。
 まだ弁当を食べている最中なので、食後にしようかどうしようか少し悩み、はドーナツを一口かじった。
 ホワイトチョコがかかったハートの形のドーナツは、佐伯の優しさのように甘くて癒される味がした。




END



千春さんがTwitterでミスドにハートの形のドーナツがあったと呟いていらして、
”このキャラなら○○する”と言ってらしたのを、ドリームにしました。

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