Warmth 2




「ん…まぶし…。それに…あったかい…」
 窓から差し込む眩しい光に は目を細めた。
 いつも寝る時は遮光カーテンを閉めているのだが、窓にはレースのカーテンしか引かれていない。どうやら昨夜は忘れていたらしい。
  は覚醒しきっていない頭でぼんやりと思った。
「目が覚めた?」
 不意にかけられた声に は驚き、一瞬で眠気が吹き飛んだ。
 それもそのはず、その声は耳元で聞こえたのだ。
「しゅ、周助?なんで…って言うか、どうしてわたし周助の腕の中にいるの?」
  はソファに座る周助の膝の上に座り、彼の腕にしっかり抱きかかえられていた。
 周助はにっこり微笑む。
「覚えてないの?あんなに愛し合ったじゃないか」
「っ!」
 は真っ赤になり、ついで服を着ていることに気が付いた。
「もうっ、からかわないで。二人とも服を着ているじゃない」
「残念。引っかかってくれなかったか」
「そこまで抜けてないわよ。それに、ここリビングのソファじゃない」
「僕はソファでしても一向に構わないけどね」
「あ、朝からなんてこと言うのっ」
「ごめんごめん。ほんとのこと教えるから、機嫌直してよ。ね?」
 周助がの黒い髪を梳きながらなだめると、 は周助の瞳をじっと見つめて念を押した。
「嘘つかない?」
「うん。今度はほんと。  、昨日 さんと会ったのは覚えてる?」
「ええ。 が美味しいワインが手に入ったからって遊びに来て、お酒を飲んで、それから…」
「それから?」
 は記憶をたどるが、2杯目を口にしたあとから先が思い出せない。
「……覚えてない。途中から綺麗さっぱり」
 周助はやれやれとばかりに溜息をつく。
「やっぱりね。 と会うのすごく楽しみにしていたのに、ショックだなぁ。 の手料理とも食べられなかったし」
 不穏な言葉があったが聞かなかったことにして、自分が悪かったことは明白なので は素直に頭を下げた。
「ごめんなさい」
「いいよ。 さんが原因だから、彼女に責任を取ってもらうよ。それに、それなりにいいこともあったし」
「いいこと?」
が僕に甘えてくれたんだよ。周助ーって抱きついてきて、とっても可愛かった」
  は瞳を見張った。本当にそんなことをしたのだろうか。
 全く覚えていないけれど、もしかしてまた周助にだまされているのではないか。
「ほんとに?」
「ほんとだよ。それに…」
「まだ何かあるの?!」
「あとは秘密」
「教えてくれるって言ったじゃない」
が僕に甘えてくれたら教えてあげる」
 ただでは教えてくれない周助に はがっくり肩を落とした。
「…も、絶対お酒飲まない」
「それは残念だな。また甘えて欲しかったのに」
 部屋の中へ朝日が優しく差し込む中、恋人たちの時間がゆっくりと動き出した。




END