eyes




「周くんの瞳ってきれいよね」
 学校からの帰り道、二人でよく訪れる紅茶の美味しい喫茶店で、唐突にが言った。
 今日は二人とも部活が休みで、久しぶりに放課後のデートを楽しんでいる最中だ。
「突然どうしたの?」
「私が周くんを好きになったきっかけ」
「どういうこと?」
「周くんは初めて私と話したときのこと覚えてる?」
「もちろん覚えてるよ」
「何を話したかも?」
「ああ。一言一句全て覚えてるよ」
 当然とばかりに微笑みを深める周助に、綾瀬は照れたような顔で応じる。
「ふふ、嬉しいな」
「それが僕の瞳とどう関係があるの?」
「周くんあの時テニスに誘ってくれたでしょ?」
「少しでもと一緒にいたかったからね」
「そうだったの?初めて聞いた」
「クスッ、初めて言ったからね。 それで?」
「あ、うん。その時の周くんの真剣な瞳がすごく印象的で、私が周くんを意識するようになったきっかけだったの。吸い込まれそうなブラウンの瞳に見つめられて、私とってもドキドキしてたの」
 は白い頬をほんのり赤く染めて言った。
にそう言われると、誰に言われるよりも嬉しいよ。テニス部のみんなに聞かせてあげたいね」
「どうして?」
「テニス部のみんなは僕の瞳を見ると引いちゃうからさ」
「なんで引くの?」
「怖いからでしょ。中でも英二が一番怖がってるね」
「変なの。全然怖くないのに。周くんの瞳ってとっても優しいのに」
 首を傾けて不思議そうに言うに周助はクスッと笑う。
 周助は自分の姿が映っている黒くて澄んだ瞳をじっと見つめ、愛おし気にを見つめながら愛の言葉を囁く。
の瞳の方が僕よりずっと優しいし、美しいよ。…ねぇ、
「ん?」
「その瞳に僕以外の男を映さないでね」
 にっこりと極上の笑みで言われ、は耳まで真っ赤に染めたけれど、しっかり頷いた。
 は少し上目遣いで周助を見ながら唇を開く。
「周くんも…私だけ見ててね?」
「僕の瞳はだけしか見てないよ。今も、これからもずっとだけを見てるよ」





 END

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