朝の光で知り得たこと




 カーテンとカーテンの僅かな隙間から、朝の光が差し込んでいる。
 細い光は部屋の中央にあるベッドにわずかに届き、真っ白なシーツに光を刻み、それに包まる人の髪を照らしていた。
 極上の絹糸のような緑の黒髪が微かな光で輝いて見える。
 ブランケットから覗く白い肌は目が離せないほど綺麗だ。
 ベッドに上半身を起こした周助は、色素の薄い瞳を幸せそうに細めた。
…」
 幸せそうな顔で微かな寝息を立てている彼女の前髪を周助は長い指でそっと梳き、あらわになった形のよい額に羽が触れるような優しいキスをした。
「朝だよ」
 ずっと見つめていたいくらい、朝の光の中にいるは綺麗だけれど、彼女の優しい瞳に自分を映して欲しくなった。
 耳にしのびこむように囁いた周助の声に、の唇から吐息のような声が零れる。
 周助の色素の薄い瞳の先で、瞼が微かに震え、黒い双眸が緩やかに開かれる。
「…ん、…しゅう…?」
 寝ぼけ眼で呟くに周助はクスッと笑って、彼女の柔らかな頬に口付けた。
「おはよう、
「……あ、おはよう、周助…」
 は言いながら頬を赤く染めて、ブランケットを肩まで引き上げた。
 こうして朝を迎えるのは今朝が初めてだ。
 それゆえには照れているのだとわかったし、なによりも彼女の仕草が可愛くて笑みが零れた。
、コーヒーと紅茶、どっちがいい?」
「えっ、あ…こ、紅茶」
 なにやらぼうっとしていた――自惚れていいのなら、は僕に見惚れていたのだと思う。
 可愛らしい彼女に周助はクスッと笑った。
「了解」
 周助はの唇に軽くキスをして、ベッドを降りるとキッチンへ足を向けた。
 手際よくミルクティーを淹れ、摘みたてのペパーミントを浮かべる。
 ふたつのマグカップを手に周助が戻ると、ミルクティーを淹れている間に着替えたらしいがベッドにちょこんと腰掛けていた。
 周助はの隣に座り、マグカップをに渡す。
「熱いから気をつけて」
「うん。ありがとう」
 マグカップを受け取って、は口にそれを運んだ。
「これ、ペパーミントミルクティー」
 驚きに黒い瞳を瞠るに周助はフフッと微笑む。
「ありがとう、周助」
が喜んでくれるならいつだって淹れるよ」
 首を傾げてにっこり笑う周助にはくすぐったそうに笑った。
「嬉しいけど、私も周助に淹れてあげたいからダメ」
「そういう可愛いことを言われると――」
 またベッドに戻りたくなっちゃうよ
 耳元で甘く囁かれて頬を真っ赤に染めるに、周助はクスクス楽しそうに笑った。




END

微エロなお題[20. 朝の光で知り得たこと]
恋したくなるお題(http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/)

BACK