今日は髪型を変えて




「あれ?、パーマかけたの?」
 登校し、教室に入って挨拶を返したは、友人の髪型が昨日と違うことに気がついた。
「ホットカーラーよ」
 パーマと違ってお金はかからないし、髪を洗えば元通りになるから便利よ、とは話してくれた。
 手軽に髪型を変えられるのなら試してみたいかも、とを見て思いつつ口を開く。
「ゆるふわで可愛いわ」
「そう?ありがと。 も試してみる?」
 に訊かれて、は瞳を輝かせた。
「え、いいの?」
「うん。じゃあ明日持ってくるね」
 その言葉にはわずかに顔を曇らせる。
「でも荷物にならない?の時間が空いてるなら、今日借りに行くけど…」
「それなら、今日は一緒に帰ろ」



 からホットカーラーを借りた、二日後。
 今日は学校が休みの日曜日で、前から周助とデートの約束をしていた。
 お互い部活が休みの日が合うことは多くなく、休日にするデートは久しぶりだ。
 だから、せっかく借りたのだし、使ってみよう。
 そう思って早めに起き、朝食や着替えを済ませてから、どきどきしながら使ってみた。
「……そろそろ大丈夫、かな?」
 呟いて、試しに一番初めにつけたカーラーを外してみると、くるんくるんと緩く髪がカールしていた。
 これなら全部取ってしまってさそうだ。
 カーラーを取り終えて、は一息ついた。カーラーが結構重かったのだ。
 また試したいかと言われると、やらないかもと思う。
 ともかく、ストレートの黒髪は緩くウェーブを描く髪型となった。
 いつもと違う髪型に少し心が弾む。
 周くんどう思ってくれるかな?
 彼のことを考えて、の顔に笑みが浮かぶ。
 姿見できる鏡の前で服装をチェックして、は自宅を出た。


 ちょっと早かったかな。
 待ち合わせ場所である駅前広場の時計台の前で、恋人の姿がないのを確かめた周助は胸中で呟いた。
 彼女はいつも時間より早くくる人だから、たいして待つことはないだろう。
 そう思った矢先、視界にこちらに歩いてくる恋人の姿を捉えた。
 周助は合図に手を上げようとし、その動きを止めた。彼女の髪型がいつもとは違ったからだ。
 驚きに色素の薄い瞳を瞠る周助の元へ、気がついたが小走りで駆け寄ってくる。
「周くん、待たせてごめんなさい」
「いや、僕も今着いたばかりだから」
 微笑みながら答えて、今思った疑問を周助は唇に乗せた。
、パーマかけたの?」
「あ、これは、がホットカーラーっていうのを貸してくれて。それでやったの。洗ったらすぐに落ちちゃうのよ」
 の説明に周助は頷いて、彼女の髪をひと房、手に取った。
「可愛いよ。こういう髪型も似合うね」
 周助が瞳を細めて微笑むと、の頬がほんのり赤く染まる。
「あ、ありがとう」
「フフッ、可愛い」
 周助は照れているの頬にさっと口づけた。
「しゅ、周くんっ」
 は怒るけれど、ますます赤くなった顔で怒られても可愛さが増すだけだ。
「僕のために可愛くしてきてくれたのだと思ったら、止められなかったんだ。ごめんね」
 周助は秀麗な顔ににっこりと笑みを浮かべて言った。
「も、もう…」
 耳まで赤く染めて俯くの華奢な手を取って、優しく手を繋ぐ。
「じゃ、行こうか。 プラネタリウムは久しぶりだから、楽しみだな」
 そう言われてしまうと、もいつまでも拗ねているわけにいかない。
「そうね、私も楽しみ」
 周助に視線を合わせて言うと、彼は色素の薄い瞳を細めて嬉しそうに微笑む。
「よかった」
 周助はと繋いだ手に少しだけ力を入れて、「行こう」と彼女を促した。 




END

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陽だまりの恋のお題05.今日は髪形を変えて

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