今年が終わるまで、あと3日。

っ」

 突然肩を叩かれ名前を呼ばれた は、びっくりして腕時計から目を離した。
 振り返った視線の先にいたのは、彼女の職場の友人である だった。

〜。おどろかさないでよ」

 そう言って、 を軽く睨んだ。

「ごめんごめん。さっきから時計ばっかり見てるから、つい気になっちゃって」

「私そんなに見てた?」

 そう訊ねた に友人はしっかり頷いた。
 そして少しからかうような口調で。

「これから不二君とデートなんでしょ〜? はすぐに態度にでるから」

「デートっていうのとは、ちょっと違うけど…」

 何と説明していいのか分からずに、言葉を探すように は頭を捻る。
 けれど、しっくりくる単語が思い浮かばない。

「やっぱり、これってデートなのかも」

。その説明じゃ全然わかんない」

「あ、やっぱり?」

  は苦笑いで誤魔化したが、そんなコトで は諦めるような性格ではない。

「親友の私に隠し事はないでしょ〜?」

「別に隠してる訳じゃないけど」

「じゃあ聞かせてよ。ねっ」

「分かったわよ。…今日の夕方から周助が私のウチに来て泊まっていくの。
 新学期が始まるまで」

「・・・は?」

 

 

 

カウント・ダウン

 


 


「あと30回だよ。

 周助がそう言うと、キッチンの方から呆れとも驚愕ともとれる声が返る。

「数えてるの?」

「まさか。いまテレビのアナウンサーが言ったんだよ」

 彼がそう言ったのとほぼ同時に、トレイにポットと2つのティーカップをのせて、 がリビングへ戻ってきた。
 トレイをブラウンのローテーブルの上にのせて、 は周助の隣に腰を下ろした。

「びっくりした。ホントに数えてると思ったわ」

 そう言いながら、 はポットから紅茶を2つのティーカップへゆっくり注いで、1つを周助に手渡した。

「ありがとう。…いい香りだね。どこの?」

「フランスよ。これね、すごくおいしいの」

 嬉しそうに言って紅茶に口をつける恋人に、周助はクスッと笑って。

が淹れてくれたから、もっとおいしくなってるよ」

「…っあつッ」

「大丈夫?君は猫舌なんだから、気を付けなきゃ」

  の顔を覗き込むように言った周助に、彼女は涙で潤んだ瞳で彼を睨んだ。

「周助がヘンなコト言うからよ」

「ヘンなコト?僕はホントのコトしか言ってないよ?」

 にっこりと微笑んで言った周助にどう対応していいか分からず、 は紅茶を飲んで誤魔化した。

「フフッ。……あ、雪が降ってる」

 その言葉に視線をテレビへむけると、ブラウン管の中で雪が降っていた。

「こっちでも降らないかしら?」

「雪が降るにはまだ早いよ」

「そうよね。でも、積もった雪ってキレイよね」

「確かに、ね。でも明日だけは降って欲しくないね」

「どうして?」

 不思議そうに言った恋人に周助はクスクス笑って。

。あと数分でお正月だよ?」

「あっ…初詣に行けなくなっちゃう」

「そういうコト。・・・・・・あと1回」


・・・ゴーン・・・

 

 108つ目の鐘の音が静かに響いた。


「「あけましておめでとう」」

 二人微笑んで、新年の挨拶を交わすと、どちらともなく顔を近づけて唇を合わせた。

 やがて、周助の身体がゆっくりと の細い身体を覆っていった。

 


 


 


 


 


 


「ねえ、 。やっぱりお参りはやめようか?」

 その言葉に は周助の腕の中から彼を見上げた。

「どうして?着物を着ようと思って実家から持ってきたのに」

「僕も の着物姿は滅多に見られないから見たいけど」

 そう言って、周助は の首筋に長い指をそっと這わせた。

「やんっ。…ヤだ。くすぐったい」

  がくすぐったさに身を捩る。
 周助はそんな彼女の耳元に唇を寄せて。

「ココにね、痕つけちゃったんだ」

「…え?」

「ココだけじゃなくって、他にもいっぱいつけちゃったけど。見えるのはココだけだけどね。
 だから着物は無理だよねv」

 にっこりと笑って言った周助を は彼の腕の中から睨んだ。

「周助〜〜〜」

「なぁに?」

 少しも反省の見えない笑顔で言われては抗議sする気も失せて、 は周助の胸に顔を埋めた。

「もういい。洋服で行くから」

「よかった」

「何がよかったの?」

の着物姿は僕以外に見せたくないんだ」

「…わがままね」

に関するコトは一歩も譲れないよ」

 そう言って、周助は の唇にキスを落とした。


 

 

 


END

椎名あや様主催『Dreaming Festival2004』に投稿/再録。
テーマは年末年始でした。
最初に浮かんだのはベタなネタで『大晦日から初詣を周助くんと過ごす』
一度はベタすぎるからヤめようと思っていたけど、結局実行(笑)
で、やっぱり黒くて策士な周助くんドリームが出来上がりました。
新年早々微エロ(笑)

 


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