冬の月夜に

 星の流れる夜に

 澄んだ夜空の下で

 あなたは何を願う?

 


星に願いを・・・


 


 学校の冬休みまであと数日となった週末。
 不二と は二人きりで不二家の山荘に旅行に来ていた。
 もちろん未成年であるため、両家の両親の了承を得てである。

 不二の母はおおらかな人で、息子が『 と流星群を見に旅行に行きたい』と言ったら、顔色一つ変えずに、喜んで了承してくれた。

 そして不二は、母の許しを得てから、恋人に旅行の話を切り出した。


『ねえ、 。週末に二人きりで旅行に行かない?』

『二人きりで?』

『うん。ダメかな?』

『ダメじゃないよ。嬉しい』

『ホント?よかった。ずっと前から君と二人きりで旅行に行きたかったんだ。
 初めての旅行だし、楽しい旅行にしようね』

『うん』

『そうと決まれば、 のご両親にお許しをもらわなきゃね』

『あ、そうよね。許してくれるかな?』

『そんなに不安そうな顔をしないで。僕が今日の夜にでもご挨拶にいくから』


 そして、その日の夜、不二は 家を訪れた。


『週末に さんと旅行に行きたいのですが、許していただけますか?』

『周助くんが一緒なら安心よ。ね、お父さん?』

『そうだな。周助くんはしっかりしているし、信用できる男だからな』

『じゃあ、周くんと旅行に行ってもいいの?』

『ああ。気を付けて行ってきなさい』

『ありがとう。お父さん』

『ありがとうございます』

『娘を宜しく頼むよ。周助くん』

『はい』


 このように、 の両親は少しも反対せずに、二人きりの旅行を許してくれた。
 それは、不二が と初めての夜を過ごした時の行動が誠実だったからであった。その時から、 の両親は、不二にかなりの好感を持つようになった。
 もっとも、”本来の姿の彼”を知っているのは を始めとする一部の人だけであるが。世の中には知らなくてもいいことは、多々存在している。
 不二の本来の姿もきっとそのようなものであろう。


 

 

 

 

?」

 お風呂から上がった不二が、リビングにいるはずの の姿が見えずに声を上げた。
 先に寝てしまったのかと思い、ベッドルームを覗いてみようかとも考えたが、彼はその考えを一蹴した。
 彼女は不二といる時に、先に寝てしまったことは特別なコトを除いて、過去一度もなかった。
 それに、黙っていなくなる事は、彼女の性格からして考えにくい。
 だとすれば、山荘内にいることは明確である。
 しかも、流星群を見にココまでやってきたのだ。
 そう考えると、当てはまる場所はひとつしかなかった。

 ベージュの厚手の毛布を一枚手にして、不二は二階へ続く階段を上がった。
 彼の予想通り、 はバルコニーにいた。
 欄干に肘をついて、 は星空を見上げていた。
 彼女の黒真珠のような黒い瞳はとても優し気で、不二はドキッとなった。
 その瞬間、 が不二に気付いた。

「周くん」

  は微笑んで、恋人の名前を呼んだ。
 凛とした澄んだ声に、彼女に魅入っていた不二は我に返った。
 そして彼女の傍に歩み寄りながら、話し掛ける。

。そんなに薄着だとカゼ引くよ」

 不二より先にお風呂に入った は、いつごろからココに来ていたのか、肌がすっかり冷えていた。
 オフホワイトのパジャマの上に厚手のブラウンのカーディガンを羽織っているものの、足は素足でスリッパを履いているだけであった。
 山の夜、しかも真冬ともなれば、空気は澄んでいるが肌に刺すように冷たい。

「くすっ。周くんはホントに心配性なんだから」

「愛する人を心配するのは当然でしょ。…こんなに冷えてるじゃない」

 そう言いながら、不二は自分の背中に毛布をかけ、 の冷えきった身体を腕の中へ閉じ込めて、毛布でふんわり包み込んだ。
 背中に感じる恋人の体温がとても温かくて、くすぐったくて。でも彼の優しさが嬉しくて。

「あったかい」

  は自分を後ろから抱きしめている不二の胸にもたれ掛かるようにして、呟いた。
 すると、 を抱きしめている不二の腕の力がわずかに強まった。

「僕もすごくあったかいよ」

 彼女の耳元でそう囁いた。

「…ふふっ」

?どうしたの?」

「ん…幸せだなぁって…そう思ったの」

「クスッ。嬉しいコトを言ってくれるね。僕のお姫様は」

「…周くんは?」

「僕?僕もすごく幸せだよ。君が傍にいてくれるからね」

 そう答えると、 は不二の腕の中で細い身体を反転させて、彼と向い合せになった。

「私も周くんが傍にいてくれて、すごく幸せよ」

 そう言って嬉しそうに笑った の唇に、不二はキスを落とした。


 

「ねえ、 。君は流れ星に何をお願いするの?」

「ないしょ」

「クスクス。じゃあ僕が当ててあげようか」

「当らなかったらどうするの?」

 首を傾げて言った に、不二は秀麗な顔に不敵な笑みを浮かべて。

「きっと当るよ。僕のお願いと同じだから」

 自信ありげに宣言した恋人に、 は黒い瞳をまばたきさせた。
 すると不二はフフッと笑って。

「ずっと一緒にいられますように、でしょ」

「ど…して分かるの?」

「どうしてだと思う?」

 その質問に は首を横に振って、不二の言葉を待つ。

「いつも のコトを想ってるからだよ」

 甘い囁きと一緒に、甘くて蕩けるようなキスが唇に落とされた。


 

 

 流れる星々に

 たくさんの想いをこめて

 ありきたりなコトかもしれないけど

 でも 二人でいつまでも幸せでいたいから

 星に願いを・・・


 

 

”ずっと一緒にいられますように”

 

 




END

・・・なんでこんなに甘いの?しかも白い。真っ白ですよ。
書いてる自分がびっくりです(笑)
どうやら周助くんに甘えたかったようです。私が(笑)
同じシュチュエーションで黒不二Verも書いてみたいなあ。

2004年 寒中見舞いフリー夢/再録

 

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