テニスコートを囲っているフェンスの外から、僕の大好きな彼女の声がした。
 いつもなら部活をやっているこの時間に、 が来ることは滅多になかった。

 僕はフェンスに背を向けて、コートで打ち合いをしていた。
 だからラリーをしている相手は、 がいることに僕が気付いていないと思ったらしい。

「不二先輩」

 ボールを返しながら、桃が僕を呼んだ。

「なに?」

先輩が来てるッスよ」

「うん、知ってる。声がしたからね」

 会話をしながらラリーを続けていると、突然芝さんの大きな声が。

ちゃん?!」

 その声に思わず振り向くと、テニスコートから走り去る の姿が目に映った。
 彼女との距離が遠すぎて顔はよく見えないけど、明らかに尋常ではない。

 僕はフェンス越しに芝さんに詰め寄った。

「芝さん!」

「ふ、不二君」

はどうしたの?」

「それが…この写真を見せたら、急に走っていっちゃったのよ」

 そう言いながら、芝さんは先週の日曜日にスタジオで撮影した写真を僕に見せた。
 でもこれだけじゃ何も分からない。

、何か言ってなかったですか?」

「ウソつき…とかバカって聞こえたけど…」

 それだけ聞けば十分だった。
 僕は を追う為に、テニスコートを出ようとした。

「不二!練習中だぞ!」

 手塚から制止の声がかかった。
 大事な試合を数週間後に控えているいま、練習が重要であることは十分分かっている。
 でも、彼女をひとりにしておけない。

「戻ったらいくらでも走るよ。だから…」

  の所へ行かせて欲しい。

「・・・仕方ないな。行ってこい」

 手塚はため息混じりに行くことを許してくれた。

「ありがとう。手塚」

 そして僕は を追って走り出した。

 人づてに のことを訊きながら後を追うと、彼女は校舎裏の林の中で座り込んでいた。
 細い肩が震えているのは、泣いているからなんだろう。

 そっと近付いて、嗚咽を漏らす彼女の柔らかい身体を抱きしめた。

、ごめん」

 耳元で謝ると、彼女は身を捩った。

「言い訳なんて聞きたくなっ…」

  の言葉を遮るように、強引に唇を重ねた。
 なんとか彼女を落ち着かせたかった。

「お願いだから、僕を信じて。

 そう言ったけれど、 の黒い瞳にはまだ不安の色が残っていた。

「ちゃんと説明するから」

 そして僕は、 が見た写真について全てを話した。

 僕は一通り話した後、 に謝った。
 すると。

「私もごめんなさい」

 そう言って、 は俯いてしまった。
 悪いのは君じゃないのに…。
 でもそう言っても納得はしてくれないだろうね。
 だから一言だけ。

「いいんだよ」

 そう言って、彼女の細い身体を抱き寄せた。
 そのまま の耳元に唇を寄せて囁く。

僕は だけの王子だよ。だから君以外の人の所へは行かないよ


 

 

 

 

END

たくさん突っ込みたいところはあるでしょうけど・・・
突っ込まないでください;
ここまで見事にまとまっていないことは分かっております。
す、すみません〜〜。(逃走)


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