テニスコートを囲っているフェンスの外から、僕の大好きな彼女の声がした。 いつもなら部活をやっているこの時間に、 が来ることは滅多になかった。 僕はフェンスに背を向けて、コートで打ち合いをしていた。 だからラリーをしている相手は、 がいることに僕が気付いていないと思ったらしい。 「不二先輩」 ボールを返しながら、桃が僕を呼んだ。「なに?」 「 先輩が来てるッスよ」「うん、知ってる。声がしたからね」 会話をしながらラリーを続けていると、突然芝さんの大きな声が。「 ちゃん?!」 その声に思わず振り向くと、テニスコートから走り去る の姿が目に映った。彼女との距離が遠すぎて顔はよく見えないけど、明らかに尋常ではない。 僕はフェンス越しに芝さんに詰め寄った。 「芝さん!」「ふ、不二君」 「 はどうしたの?」「それが…この写真を見せたら、急に走っていっちゃったのよ」 そう言いながら、芝さんは先週の日曜日にスタジオで撮影した写真を僕に見せた。でもこれだけじゃ何も分からない。 「 、何か言ってなかったですか?」 「ウソつき…とかバカって聞こえたけど…」 それだけ聞けば十分だった。 手塚から制止の声がかかった。 の所へ行かせて欲しい。 「・・・仕方ないな。行ってこい」手塚はため息混じりに行くことを許してくれた。 「ありがとう。手塚」 そして僕は
を追って走り出した。 人づてに
のことを訊きながら後を追うと、彼女は校舎裏の林の中で座り込んでいた。 耳元で謝ると、彼女は身を捩った。 「言い訳なんて聞きたくなっ…」
の言葉を遮るように、強引に唇を重ねた。 そう言ったけれど、 の黒い瞳にはまだ不安の色が残っていた。 「ちゃんと説明するから」 そして僕は、
が見た写真について全てを話した。 そう言って、
は俯いてしまった。 そう言って、彼女の細い身体を抱き寄せた。 「僕は だけの王子だよ。だから君以外の人の所へは行かないよ」
END たくさん突っ込みたいところはあるでしょうけど・・・ |