声援

 


 放課後のテニスコートには、多くの女性が集まっていた。
 なぜなら、今から青学と他校の練習試合が始まるからである。
 部長の手塚国光、天才と名高い不二周助をはじめとする青学レギュラー陣たちは、校内でファンクラブがあるほど人気がある。それゆえ、普段の練習でも十数人かの女生徒たちが集まっていたりする。
 けれど、今日はそれに拍車をかけていた。
 それは練習試合の相手が氷帝学園だからであった。
 氷帝学園テニス部は、部長の跡部景吾を筆頭に、青学レギュラー陣に負けず劣らずの美形の集まりである。その上テニスの腕も良いときては、人気があるのも頷ける。

 

「うっわ〜。すごいにゃ〜。ね、大石」

「エージ。嬉しそうだな」

「うん!声援はあった方が燃えるじゃん」

 そう言ってにゃはは、と笑った菊丸に大石は苦笑して。

「そうだけど、人数多すぎだろ」

「クスクス。確かにね」

 不二がそう言うと、菊丸はなかば呆れたように。

「不二は ちゃんの応援があればいいんだもんにゃ〜」

「うん。別に 以外の女の子の声援なんていらないし」

 不二はにっこり笑ってそう言ったが、言葉には毒が含まれているのがありありと分かる。
 もっとも、暗にうるさいから必要ない、と言いたいのか、それとも別のコトを差しているのかは分からないが。

「だけど、これじゃあ さんの声は分からないんじゃないか?」

 そう訊ねた大石に不二はクスッと笑って。

「分かるよ。 の声はトクベツだからね」

「「・・・・・・」」

「どうしたの?二人とも固まっちゃって」

「い、いや、固まってないよ」

 どう見ても動揺が隠せていない大石が慌てて首を横に振ると、菊丸も大石に同意を示すようにウンウンと頷いて、テニスコートを囲っているフェンスのある一点を指差した。

「ほ、ほら不二。 ちゃんが来てるにゃ」

「ホントだ。ちょっと行ってくるよ」

 そう言うと、不二は にむかって駆け出した。
 不二が去った後、ゴールデンペアは顔を見合わせて、ふうっと深い息をついた。


 


!来てくれたんだね」

 フェンス越しにそう言って、不二は恋人に笑いかけた。
 すると、あたりから黄色い声が上がった。
 不二はそれに軽く溜息をつくと、瞳をゆっくり開いて女生徒たちを見据えた。

「ちょっと静かにしててくれる? の声が聴こえないからさ」

 口元は笑っていても、瞳が笑っていない笑顔でそう言うと、二人の周辺は水を打ったように静かになった。
 いつもは物腰の柔らかい不二の姿しか知らない女生徒たちは驚いて閉口したが、恋人の は彼が独占欲が強いのを理解していて、こういった状況になれてしまったのか、気にとめる様子はなかった。もっとも気にとめていたとしても、不二をとめることはできないが。

 そして不二は先程の冷たい雰囲気を消して、蕩けるように甘く優しい笑顔で。

「部活はどうしたの?」

「休みになったの。 が応援したい人がいるから、今日の部活は休みにするって言い出して」

「そうなんだ?でも良かったよ。今日は の声援がないと思っていたから」

「くすっ。じゃあたくさん応援するわね。あ、でも…。
 こんなにギャラリーが多いと声援なんて聴こえないよね」

  がそう言うと、不二はにっこり笑って。

「大丈夫だよ。君の声はトクベツだからね。
 だからいつもみたいに言ってね?」

 不二のセリフに頬を赤く染めて、それをおさえるように は両頬に白い手を添えた。

 そこへ手塚の集合の声がかかった。

「あ。集合しないと。じゃあ行ってくるよ、

「うん。頑張って、周くん」

 手を振ってテニスコートに戻って行く恋人に、 も手を振り返して声援をおくった。
 それに応えるように、不二は声援をおくってくれた恋人に投げキッスを返した。


 


 

 

END

気がついたら黒い不二周助になっていました(汗)
優しくて甘い周助さんが好きな方、申し訳ありません;;
黒不二推奨の私に白不二は難しいんです(言い訳)
ほんのちょっとでも気に入っていただけると嬉しいのですが・・・。
(企画用につけたコメント↑)

桜野雪花菜様・主催『Syusuke Love Party 2004』 投稿/修正/再録


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