日曜日、天気のよい昼下がりの午後。 不二は自宅の自室で恋人と過ごしていた。 テニス部の休みと恋人の仕事の休みが重なることは滅多になく、偶然に休みの重なった今日は、久しぶりに二人きりでゆっくり過ごせるはずだった。
髪
「ねぇ、周助」 「なあに?」 「おば様と由美子さんはいないの?」 家に上がってリビングに通された
が、人の気配のない室内を見てそう訊いた。 「うん。出掛けてるんだ。二人でオペラを観に行くって言ってたから、戻るのは夜だと思うよ」 「そう」「それがどうかしたの?」 「もうすぐお昼でしょ。だからね、どうしようかなって思って」そう言った に不二は嬉しそうに笑って。 「 の手料理が食べたいな」「え?」 不二のセリフに は目を見張った。「なんで驚くの?」 「だって、おば様が準備とかなさっていったんじゃないの?」「してないよ。 が来るからいらないよって断っておいたから」 「どうして?」不思議そうに首を傾げて訊ねてくる彼女に彼はにっこり笑って。 「久しぶりに の手料理が食べたかったからv」 大好きな恋人に笑顔で言われて断ることができるはずもない。 「そうだね… の作るものは何でもオイシイから迷うな」 かくして不二が望んだものは、彼の好物であるケイジャン料理の品々だった。
そして、彼女が淹れてくれた紅茶を飲みながら、楽しい時間をゆっくり過ごせるはずだったのだが一一一。
は不二の肩に寄り掛かって、微かな寝息を立てていた。 (やっぱり寝顔も可愛いな…) そんなコトを思っていると、僅かに開けてある窓からそよ風が入り、 の長い黒髪を揺らした。( の髪、長くなったよね…) 二人が付き合い始めた三年前、 の髪は肩より少し長い程度だった。それが今は腰まである。それが二人が共有してきた時間の長さだと思うと、嬉しいけれど、くすぐったいような気さえする。 風に舞った髪が数本、彼女の顔にかかった。 「…周助の髪、キレイ」 目覚めた途端、 は細い指で彼の色素の薄い髪を触ってそう言った。そんな彼女に不二は苦笑して。 「どうしたの。いきなりだね」 その言葉に はふふっと小さく笑って。「太陽の光で輝いて見えたの。キレイだな〜って思って。 「うん。羨ましいな。私も周助みたいな髪がよかったな」 そう言いながら、 は自分の髪を手に取ってジッと見ると、軽く溜息をついた。すると不二は彼女の黒髪をサラッとすくいあげた。 「僕は自分の髪より
の髪の方が好きだよ。 「すごくイイ香りがするしね」 フフッと笑いながら甘く囁いた恋人に、 は嬉しさと恥ずかしさで頬を朱色に染めた。
END 『髪』というお題から連想したのは、周助さんの髪でした。 桜野雪花菜様・主催『Syusuke Love Party2004』投稿/再録 周助さんの髪に触ってみたいな〜。あ、でも・・・。 |