笑顔の理由

 

 俺は、ずっと疑問に思っていることがある。
 それは、親友の不二周助の笑顔について。
 思えば、高校に入学してテニス部に入部して、初めて会った時も笑顔だったっけ。
 どうしてこんなに笑っていられるんだろうって、いつも俺は不思議に思っていたりする。
 笑うのが悪いワケじゃないけど、人は誰しも怒ったり、泣いたりするもんだから。
 でもね、なんでずっと笑っていられるのか、友達をやっていても、答えは見つからないんだよね。
 ずっと訊いてみたいって思ってるけど、面と向かって訊くようなことでもない気がする。
 手塚みたいにクールな顔をしてるヤツも珍しいけど、不二みたいにいつも笑顔を絶やさないヤツも珍しいよね。


「英二。なにか用でもあるの?」

「ほえ?どして?」

「どして…って、ずっと僕たちのコトを見てるからさ」

 不二と不二の彼女の ちゃんが仲良く話しているのを、俺はいつのまにか凝視していたみたいだ。
 無意識の行動だったから、用があるワケじゃない。

 でも、これはチャンスなのかも一一一。

 

「あのさ、不二に訊きたいことがあるんだけど」

「改まってどうしたのさ」

「今日もニコニコしてるな〜って思って」


「それは がいるからだよ」


 多分、きっと不二ははぐらかすんじゃないかって、そう思ってたから、即答されて俺は面喰らった。
 不二のことだから、「さあ、なんでだと思う?」とか言われると思ったのに。

 そして、ふと ちゃんに視線を向けると、彼女は白い頬を桜色に染めていて。
 でも、すごく幸せそうに笑ってる。

 

「英二。 は僕のだよ」

「分かってるにゃ」

 そんなこと改めて言われなくても、身に染みてるって。
  ちゃんが絡むと、不二は容赦ないからな。
 不二は友達の俺にも、彼女が絡むと容赦がない。

「それならいいけどね」

 そう言って、不二はにっこり笑った。
 笑ったけど、その笑顔はハッキリ言って、すっげえ恐い。
 口元は優雅に笑っているのに、色素の薄い瞳は、氷のように鋭い。
  ちゃんに向けてる笑顔とは、全く違う種類の笑顔。
 だから、なんとなく不二が言ったことが分かった気がする。


がいるから』


 これは、絶対に不二の本音だ。


 不二の笑顔の理由は、 ちゃんがいるから・・・か。
 そうだよな。好きな子の前で笑わないヤツなんていないよな、ウン。
 でも、不二の場合は極端だよな〜。

 

 そして気がつくと、不二の視線は俺から ちゃんに戻っていて。

「ねえ、 。今日は一緒に帰ろうね」

「うん。部活が終わったら、テニスコートに行くね」

「うん。でも、僕が先に終わったら、そっちに行くよ」

 不二は蕩けるような笑顔でそう言った。
 それこそ、女の子たちが悲鳴を上げそうなくらい、優しい顔で。
 でもその笑顔が ちゃん以外の女の子に向けられることは絶対にないって言い切れる。
 彼女は不二にとって、すごく大事な女の子だから一一一。


 俺は席を立ち上がって、クラスを後にした。
 昼休みはまだ半分残っているし、あのままあそこにいても、二人のラブラブっぷりに当てられるだけだし。


「久しぶりに屋上でもいこっかな〜」


 俺は、屋上へ向かって歩き出した。

 

 

 

 

END

なぜ菊丸君視点なのか。
それは、周助くん視点にすると色んな意味でヤバそうだったから(汗)
でも、イマイチな出来なので、周助くん視点も書くことに決定(笑)

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