視線



 どうして周くんは何も言わないのかな?
 ずっと自分の顔を見られていたら、気になって「なに?」って言いたくならないのかな?
 私だったら絶対に言ってると思う。何も言わないでずっと顔を見てたら不振に思うもの。
 でも、私の顔を見てるのが周くんだったら、恥ずかしくて困るけど。
 それなのに彼は何も言わない。いつもと変わらない穏やかで優しい笑顔を浮かべて、私を見てる。

「周くん」

 彼の名前を呼ぶと、彼はにっこり笑って。

「なに、

「・・・なんでもない」

 そう言っても怒ったりしないで、クスッと微笑むだけ。
 そして私はまた彼を見つめる。

「気にならないの?」

 思いきって訊いてみると、周くんは首を傾けて。

「なにが?」

「見られてて、気にならない?」

 言うと、彼は色素の薄い瞳を一度だけ瞬きさせた。
 そして、フフッと笑って。

「ならないよ。 は?」

「え?」

「視線、気になるの?」

「なるよ。ずっと見られていたら、言いたいことでもあるのかなって思う」

 思ったまま口にすると、彼はクスクス笑った。
 そして、切れ長の瞳をフッと細めた。
 その表情に私の心臓が跳ねる。初めてみた顔じゃないけど、すごくドキドキする…。

「やっぱり は可愛いね。 そういう素直な所、大好きだよ」

 言われて、頬も耳も一気に熱くなった。
 周くんの視線が恥ずかしくて、思わず俯いてしまう。

「クスッ、ダメだよ」

 その声が耳に届いたのと彼の大きな手が私の頬を包みこんだのは、ほぼ同時だった。
 
は僕を見ていてくれなきゃ。勿論、僕は を見てるから…ね」

 フフッと笑って、彼が私をじっと見つめる。
 心の中を全て見すかされているようで、ドキドキが止まらなくなる。
 
「・・・

 甘い声で名前を呼ばれて、鼓動が早くなる。
 もう…ダメ。
 私は周くんの瞳から逃れるように、瞳を閉じた。

「愛してるよ」

 囁かれて、唇にキスされた。
 そしてそのまま身体は周くんに抱き締められて。
 触れるだけだったキスは、深く熱くなってくる。

 もう何も考えられない。
 周くんのことしか分からない。

「・・・・・しゅ…くん」

…いい?」

 周くんが言いたいことは解るけど…
 でも、こんなに明るい。

「…ダメ。恥ずかしい…から…」

 それだけ言うのが精一杯だった。
 抱き締める腕はすごく優しいけど、彼の体温と瞳が熱くて。
 おかしくなってしまいそう。

「どうして? はキレイだよ。僕の一番大切な人だから」

 にっこりと笑顔で言われて、恥ずかしくて、身体中の血が沸騰しそう…。
 ・・・やっぱりダメ…。
 周くんの笑顔には適わない。

「・・・・好き」

 彼の広い胸に顔を埋めてそう言った。
 すると、クスッと笑う声がして。

「さっきの答え、教えてあげるよ」



 

 

  に見つめられてるのは、すごく幸せだよ。
 君の瞳に映っているのが、世界で僕一人なんだから。

  を独り占めできる最高の時間だよ。



 

 

 そして周くんは私を軽々と抱き上げて、嬉しそうに笑った。



「もっと を独占させてもらうよ。 ゆっくり…ね」




 そして、オレンジ色の空が私の視界から遠ざかっていった。



 

 

 

END


周助くんに独占して欲しかったので、つい。
書きかけだったのが『R&D』の後遺症でこんなものに…。
半分以上、いま仕上げた;

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