誓い



「‥‥‥ん」

 赤く色付く唇から微かな吐息が溢れた。
 白いシーツに広がる黒髪が朝日に照らされている。
 優しい日射しの中に横たわる、僕の女神。


 ずっとあなたが欲しくて

 あなたしか欲しくなくて



 ――― しか愛せなくて



 白い頬に指で触れると、閉じられた瞼が微かに動く。
 
「目、覚めた?」

 訊きながら柔らかな唇にキスを落とす。
 起き抜けでぼんやりした黒い瞳が僕を見つめる。

「ん…しゅう?」

 そう言えば、寝起きはよくないんだよね、 は。
 遠い記憶が鮮やかに甦って、クスッと笑ってしまう。
 あの時よりあなたが愛しいのは、あなたが僕のものになってくれたからだ。

「おはよう、

 抱きしめている腕に力を入れて抱きしめ直して。
 目元にキスをすると、 は白い頬を赤く染めた。

「あの…周助?」

「ん?」

「そんなに抱きしめられると…恥ずかしい…から」

 呟きながら、耳まで赤く染まっていく。
 昨夜・・・誕生日の夜に、 の初めてを貰って。一度だけじゃ足りなくて、何度も愛しあった。
 それでもまだ全然足りなくて、朝になってから再び を求めた。
 とうぜん服なんて着ていなくて、二人とも裸のまま。

 素肌に感じる の体温が愛しくて、手放したくなかったから。
  は僕だけのものだと実感したかったから。

「クスッ、そんなに照れなくてもいいじゃない」

 白く細い手を捕まえて指先にキスをすると、黒曜石のような瞳が見開いた。

「指‥‥」

「指がどうかした?」

 わかっていて気付かない振り、なんてイジワルだと思うけど。
 でも、あなたの口から僕は聞きたい。
 あなたの澄んだ声で。
 あなたの柔らかな唇で。

  の気持ちを聞かせて欲しい。

「・・・嬉しい」

 瞳を潤ませて微笑む がたまらなく愛しくて。
 ぎゅっと抱きしめて、柔らかな唇を深く奪ってしまいたくなる。
 でも―――。

『…待ってるから、きっとよ?』

 一年前、 が言ってくれた言葉が鮮明に甦る。
 その約束を支えに、僕は進んできた。
 今、この瞬間のために。
 僕を信じて待っていてくれた、あなたのために。

・・・あなたを離したくない」

「周助・・・」

「僕と結婚してください」

 他の誰でもない、あなただから。
 僕は しかいらない。
 隣にいて欲しいのは、目の前にいるあなただけ。

「・・・・・・はい」

 微笑む の瞳の眦から涙が落ちる。
 その瞳に唇を寄せて、流れる涙を拭う。

「愛してるよ、

「私も・・・」

 その言葉と一緒に の細い腕が僕の首に回される。

「ずっと離さないで・・・」

 そう囁いた赤い唇が僕にキスをした。

「離さないよ。 がイヤって言ってもね」

 離れた唇を追って、キスを仕掛ける。
 二人の吐息が混ざってしまうような、深くて熱いキスを。

 この持て余す熱を、溢れる想いを、伝えたい。

 柔らかな唇を割って舌を忍ばせると、 はたどたどしくもそれに答えてくれる。
 キスをしたまま、細い肢体をベッドに押し倒した。
 
「・・・ん・・・っ・・・」

 深く舌を絡めると、甘い吐息が の唇から溢れた。
 その甘い吐息に、僕の中に熱が生まれる。
 昨夜から何度も愛しあっているのに。
  の最奥に僕を何度も刻み込んでいるのに。
 
「しゅ…すけ…」

「ごめん、 。止められそうにない」

「・・・イヤじゃないから」

 首を小さく横に振って、 は小さな声で言った。
 耳まで赤く染めて恥ずかしそうに微笑む。
 そんな笑顔は反則だよ、
 どうなっても僕は責任取れないよ?

「愛してる」

 そして の返事を待たずに、細い肢体に手と唇で触れていく。
 柔らかな膨らみを手の中におさめて。
 赤く色付く蕾を口に含んで、舌で吸うように触れる。

「・・・っ・・・あッ」

 桜色に染まった肢体にキスを落として、赤い花を散らせていく。
 その度に柔らかな唇から掠れた甘い吐息が溢れる。
 花園に指を挿れると、そこはすでに蜜で溢れていた。
 引き抜いた指に絡まった蜜を舌で舐め取る。

「・・・甘い、ね」

「や…っ」

「ダメだよ、 。僕を煽った責任はちゃんと取ってね?」

 耳元で囁くと、赤く染まった頬が更に赤くなっていく。
 ホントに って可愛い。

「僕しか知らない をもっと見せて・・・」



 離さないよ

  に触れていいのは

 抱きしめて愛していいのは

 僕だけ、だよ―――


 愛してる・・・



「・・・ っ」

  が達した瞬間、僕も の中に熱を解き放った。





END

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