rareness ― sequel ― 外は木枯らしが吹き、地面に落ちた枯葉をどこへでもなく運んでいく。 吐き出す息は白く霧散する、クリスマス間近の昼下がり。 不二家に一人の来客があった。周助の幼馴染の佐伯虎次郎だ。 佐伯を家に遊びに来ないかと誘ったのは周助で、それは三日前のこと。 が無事に出産を終え、落ち着いたのが理由だった。 買ったばかりのベビーベッドに赤ん坊の男の子が大人しく寝転んでいる。 少し前にが母乳を与えたばかりで、眠ってはいない。 産まれて三週間に満たない赤ん坊を覗き込むように見ているのは、赤ん坊の父親である周助と友人の佐伯だ。 二人が見ててくれるなら、とはスーパーへ買い物に出かけている。 昨日は雨がひどくてそれなりの買い物をするには不向きだったし、佐伯を夕食に誘ったので、その買い出しを含めての外出だ。佐伯は一時間程お邪魔したら帰るつもりでいた。だが、せっかく遊びに来たのだからと二人から夕食に誘われて、それならお言葉に甘えて、となったのだった。 「小さい手だなあ」 赤ん坊が両親と病院関係の人以外に接するのは佐伯が初めてなのだが、佐伯が手を触れていても警戒して泣くことはなく、それどころか嬉しそうにはしゃいだ声を上げている。 「人見知りしないんだな」 感心したように佐伯が言った。 「そうみたいだね。けど、まだと僕の家族に会わせてないから、はっきりわからないな」 「へぇ、そうなのか。 ちょっと抱っこしてみてもいいかな?」 「いいよ」 佐伯は赤ん坊の背と後頭部を支えて、そっと抱き上げた。 「なんだか慣れてるね」 周助がそう言ったのは、佐伯は結婚していなくて子供はいないからだ。 「の友達の赤ちゃんを前に抱っこしたことがあるからだよ」 は佐伯の婚約者で、周助も何度か会ったことがある。 「そうなんだ。さんは元気?」 「ああ」 応える佐伯の腕の中で、赤ん坊はきゃっきゃっとご機嫌な声を上げている。 赤ん坊をあやしながら、佐伯は視線を周助に向けた。 「あとにもさきにも、あんな不二は初めてだったなぁ」 唐突に、佐伯はからかうような口調で言った。 周助は佐伯に言われたことがいつのことを指しているのかすぐにわかった。 佐伯が言っているのは約三週間前――の出産日のことだ。 あの日、の出産を待つ間ずっと落ち着かなくて、気がついたら佐伯に電話をしていた。会話の内容がわけのわからないことだったのは、ぼんやりとだが覚えている。 「あれは……」 周助は眉間に皺を寄せて苦さと照れを足して割ったような顔をし、言葉に詰まった。 「彼女似かな?」 赤ん坊の顔を見ながら言った佐伯にからかわれているのはわかったけれど、反論する言葉が見つからなくて、周助は複雑な顔で溜息をついた。 END BACK |