君しか見えない
付き合い始めて数カ月。背中に感じるひんやりとした感触。 それとは対照的に、自分の上から感じるのは熱い体温。 一緒に暮らすようになって数週間。 いつかはこうなるということはお互い暗黙の了解であったことは間違いない。 は動く事ができずに、周助を見上げていた。 頭の中で周助の声が何度も繰り返す。 「ご褒美は 自身がいいな」 声を出せずにいる の頬を、周助は両手で包み込んだ。 そして の瞳を見つめながら。 「もう限界だよ。 が欲しくて、気が狂いそうだ…」 「周…助。でも、私…」 「わかってる。初めて、なんでしょ?」 「どう…して?」 「身体が微かに震えてるから、そうかなって。違う?」 「…違わない。…周助は笑わないの?」 「どういう意味?」 「だって19歳で未経験なんて、おかしいでしょ…」 が苦笑いを浮かべてそう言うと、周助は首を横に振った。 「全然おかしくない。僕は嬉しいよ。 の最初で最後の相手が僕で、すごく嬉しい」 「でも周助は……」 ――初めてじゃないでしょ? ――付き合ってから知ったけど、周助、すごくモテる ――だから・・・ 「クスッ。安心していいよ。僕も初めてだから」 口に出して言っていないのに、どうしてわかるんだろう、という思いと、信じられないという思いに、 の口から呟きが漏れる。 「ウソ。だってあんなにモテるのに…」 その言葉に、周助はゆっくりと瞳を開いた。 色素の薄い切れ長の瞳は、彼の言葉が嘘でないことを裏付けるように、とても真剣だった。 まっすぐ自分を見つめる瞳に、 は心が震えた。 それと同時に、黒い瞳から雫が一筋落ちた。 「泣くのはまだ早いよ」 周助はクスッと笑って、 の顔に自分の顔を近付けると、頬を伝った雫を舌で舐めとった。 「…バカ…」 そう呟いて、 は周助の首に腕をまわして抱きついた。 「好きよ、周助」 「僕も が大好きだよ」 顔を見合わせて、お互いにクスッと笑った。 二人の吐息が重なる。 周助の唇が の唇に優しく、甘く触れては離れる。 何度も繰りかえされるキスは、いつしか激しく深いキスへと変わっていった。 「……ぅんッ…っ…んんっ」 息苦しさに の眉間に皺がよる。 だが周助は唇を離す気配がない。 しばらくして、ようやく周助が唇を解放すると、 は荒い息をついた。 よほど苦しかったのか、 の瞳は潤んでいる。 「その瞳は反則だよ」 困ったように言った周助に は首を傾げた。 そんな些細な仕種も周助を煽る材料になることに は気がつかない。 「ほら、また。…ダメだ。もう手加減できそうもない」 周助はそう呟いて、 の首筋に唇を這わせ、強く吸い上げた。 「…った」 が微かな痛みに声を上げたが、それを気に止めず、周助は鎖骨に唇を這わせ白い肌に新たな所有の印を刻んだ。 の衣服を初めてとは思えないほど器用に脱がせながら、周助の唇は の白い肢体にそって下降を続ける。 胸元に、上腕に、お腹に、太腿の内側に、身体の隅々に唇を這わせて、いたるところに所有の印を刻み込む。 唇で触れるだけで何もしてくれない周助がもどかしくて、 は声を上げる。 「しゅうすけぇ…っ」 「そんな顔しないで…」 周助は の言葉を待っていたようにそう言うと、腰のラインに這わせていた手を胸元へもっていき、白い膨らみをやんわりと包んだ。 「あんっ…」 の口から甘い声が溢れた。 その甘い嬌声に誘われるまま、周助は赤いつぼみを舌で転がして、口にくわえて軽く歯を立てた。 びくりと の身体が跳ねる。 「あ…ンッ」 「可愛い、 」 「やだっ…そ…ゆこと言わな…で」 「どうして?」 「恥ずかし…いっ」 「すぐに恥ずかしくなくなるよ…」 の胸を愛撫していた周助の手は腰のラインを滑って、下肢へ伸ばされた。 花弁の入口を指先で一度ゆっくりなぞって、そこが密で濡れているのを確認すると、長い指を数本 の中へ挿入した。 ずぷっと卑猥な音をさせながら、周助の指が の中深く埋まっていく。 「ひあっ…あっ…ッ」 挿入された周助の指は のいいところを探して中を抉るように蠢く。 花弁からは甘い香りの密が溢れだし、 の太腿を滴り落ちる。 「アッ…もぉ…やあ…っ」 あまりの快感の波に、 から甘い声が漏れる。 その声に周助は花弁に挿れていた指をゆっくり引き抜き、指を滴り落ちる の密を舌で味わうように拭った。 「、いい?」 「んッ…周助」 の脚を高く掲げて、周助は熱くなった自身を花弁の入口に押し当て、ゆっくり中へ沈めた。 だが男を受け入れたことのないそこは、周助の楔を拒むように締め付ける。 周助は綺麗な顔を僅かに歪めた。 「くっ…キツッ…、力抜いて」 そう言われても、初めての事ではどうしたらいいか分からず、か細い声を出す。 「ど…したらい…のっ…わかんな…っ」 「、僕を見て」 は閉じていた瞳を開いて、涙で濡れた瞳で周助を見上げた。の瞳に優しく微笑む周助の顔が映る。 「好きだよ、」 「私も好き」 が応えると、唇にキスが落とされた。 甘いキスにの身体の力が抜けてゆく。 周助は の柔らかい唇をキスで塞いだまま、一気にを突いた。 「んんッ…っん…」 の細く白い肢体が大きくしなった。 それと同時にの太腿の内側に赤い液が伝い落ちる。 「あっ…しゅ…すけ…」 唇が解放されて、 は恋人の名を呼んだ。 「 、わかる?僕とひとつになってるの」 「うん。…私の中、すごく熱い」 「僕も。…もっと一緒に溶け合おう?」 の返事を待たずに、周助は再び律動を始めた。 そこから先のことは覚えていない。 覚えているのは、周助の身体の重みと体温。 そして意識がなくなる直前に聞こえた言葉だけ。 が欲しくてたまらなくて、夢中で抱いた。 すがりつく細い腕、突き上げる度に桜色の唇から溢れる甘い吐息。 それがとても愛おしかった。 翌朝目が覚めると、私はベッドにいた。 きっと周助が私を運んでくれたのだろう。その周助は、私の背中に腕を回して、私を抱き締めるように眠っている。 汗でべとつく肌をすっきりさせたくて、シャワーを浴びようと少し動いた。 すると、下肢に妙な違和感を感じた。 「、そんなに動くと感じちゃうんだけど?」 「周助、起きて…あッ」 「ほら、だから言ったのに。まだ繋がっているんだから」 周助がクスリと笑ってそう言った。 私は恥ずかしさでいたたまれなくなり、周助から視線を反らした。 すると私の耳元で周助が囁いた。 「そんな顔されたら我慢できないよ、 」 「ちょっと何…っ」 私の抗議の声は周助のキスで消され、朝から昨夜のように周助に抱かれてしまった。 この時の私は、夜も朝も周助に抱かれる生活が一週間も続くとは思っていなかった。 もちろん睡眠時間がほとんどなくて、昼間は二人で眠って、お互いに学校に行けなくなるとは微塵も思っていなかった。 END 『L*J』のあやちゃんに捧げた「Darling Darling」の続編。 BACK |