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 間もなく日暮れになる時刻に現地へ到着した。
 白い砂浜と深青の色をした海。
 今見ている風景は昼間だったらどんなに美しいだろう。
 ザザンと静かに響く波音に耳を傾けながら、二人はコテージへ向かった。




 二人だけの楽園




 晴天に恵まれた翌日。
 昼食を終えて紅茶で一息ついてから、二人は海で遊ぶことにした。
 支度をすませた周助はが着替えている部屋のドアをノックした。
「はい?」
、先に行って待ってるから」
「うん、わかったわ」
 素直な返事に周助はクスッと微笑む。
 その微笑みは何かを企んだ子供のようだったが、扉を隔てているのでは気がつかなかった。
 クリーム色のビキニに着替えたは、大きなタオルを持ってコテージを出た。
 いい天気に心を弾ませながら砂浜を歩いて、周助の待つ場所へ向かう。


 テニスの大会が終わった後で、周助から旅行に誘われたは二つ返事で誘いを受けた。
 アメリカを拠点としてプロテニスプレイヤーとして活躍している彼とは、そう頻繁に会えない。
 電話やメールはほぼ毎日していても、逢いたい、傍にいて欲しいといつも思っている。
 だから、デートの誘いも嬉しいけれど、こうして旅行に誘ってくれるのはもっと嬉しい。
 行き先が海外だと聞いた時には驚いたけれど、「二人きりでゆっくり過ごそう」と言われて、嬉しくないわけがない。
 もっとも、島ひとつ借り切っていると聞かされたのは昨夜のことで、とても驚いた。
 周助は「たまにはいいだろ」と微笑んで金額のことは言わなかったが、相当な額であるのは間違いないだろう。
 は驚くやら呆れるやらで、しばらく唖然としてしまった。


 浜辺で横たわっている周助に近づいたは言葉を失った。
 周助が青く細いラインの入ったパイル地の白いタオルの上にうつぶせになって、均整の取れた上半身を上げている。
 それは別にいい。問題は周助の格好だった。
 テニスで鍛えられほどよく筋肉がつき引き締まっている身体の下半身に、彼は何も着ていない。
 つまり、普段見ることなどない尻が丸見えの状態だった。
「どうしたの?」
 右腕で身体を支え上半身を上げている周助が首を傾けて微笑む。
 は凝視していた自分に気がつき、パッと視線を逸らした。
 そんな彼女に周助はクスッと笑う。
も脱ぎなよ」
「なっ、なに言って…!」
 白い頬を赤く染めて周助を見たの瞳に、微笑む周助が映る。
「せっかく無人島に来たんだから、普通ではできないことをやってみてもいいだろ?」
「私は遠慮します」
「どうして?誰もいないよ」
「あなたがいるでしょ!」
 耳まで赤くなりながら抗議すると、周助は瞳を細めてフフッと微笑んだ。
「自分で脱ぐのが恥ずかしいなら、僕が脱がしてあげる」
 声が耳に届いたのと同時に腕を引かれて、気がついた時には周助の顔を見上げていた。
 切れ長の瞳に見つめられて動けない。
「いいよね?」
「な…にが?」
 バカなことを訊いている。
 そんなことは訊く必要ないのに。
 顔が真っ赤になっている自覚があるのに、身体の中から熱くなる自分を自覚していても、素直に頷ける筈がない。
 恥ずかしいのに嬉しいと思っていることを知られたくない。
 きっと自分がそう思っていることなど周助にはお見通しだとわかっていても、言ってしまう。
「脱がせるのもだけど、それで終われそうにないから、確認」
 耳元で囁かれて、全身に熱が走る。
 身体が密着した部分から、周助の熱を感じる。
 本気でイヤだと言えば、周助は無理強いをしない。
 けれど、周助の瞳に捕らわれてしまって、抵抗も、声もでない。
 周助はフッと笑って、柔らかな唇をキスで塞いだ。
 優しく甘い触れるだけのキスから熱く深いキスに変わるまで、時間はかからなかった。
 周助の舌がの唇を割って口内へ入り込み、舌を絡めとる。
「んッ…っ…んぅ」
 角度を変えながら続く深いキスに、の唇からは吐息まじりの声が零れる。
 長いキスから開放された時には、の息は上がっていた。
「…っ…はぁ…」
 肩で息をする恋人の姿に、周助は嬉しそうに微笑む。
「好きだよ、
 の耳に軽く噛み付き囁いて、首筋に舌を這わせる。そして強く吸い上げると、赤い花が咲いた。
「あっ…」
 柔らかな唇から吐息のような甘い声が零れる。
 周助の唇が鎖骨に、胸に触れる度に、赤い花が咲いていく。
 しなやかな長い指でビキニの肩紐を解き、胸を隠している布を取り去る。
「や…ッ」
 零れ出た胸を隠すようには腕をクロスさせる。
 周助にされるがままになっていたが、明るい中で見られているということが、すごく恥ずかしくなった。
 誰もいない。それはわかっている。
 けれど、ここが外であるのを、空に輝く太陽が教えてくる。
「どうして隠すの?いつもはこんなことしないのに」
 が胸を隠している理由に察しがついているのに、彼女の羞恥を更に煽ることになるのをわかっていて、周助は意地悪く訊く。
 白い頬を赤く染めて瞳を瞑るに、周助は切れ長の瞳を細めた。
 細い腕にキスをしながら胸を隠す腕をやんわりどけて、赤く色づく蕾を吸いとるようなキスをする。
「んッ…」
 背中を仰け反らせたの唇から甘い声が零れた。
ってホント感じやすいよね」
 嬉しそうにクスッと笑って、キスをした蕾の方の白いふくらみを手の中におさめる。
 そして円を描くようにゆっくり揉みながら、もうひとつのふくらみの蕾に唇を寄せ、舌で触れてから歯で軽く噛み付いた。
「ふ…あッ…っ」
「気持ちイイ?」
 の耳元へ唇を寄せ、意地悪く囁く。
 それが彼女の羞恥心を煽るとわかっていて、周助はわざとそう訊ねる。
 イヤイヤをするように首を左右に振るに周助はフフッと笑う。
「ねえ…もっと気持ちよくなって?」
 ほのかに染まっていく細い身体の滑らかな感触を楽しむように、胸元、わき腹、お腹へ手を這わせながら、その手を追うように唇で触れて、所有の印を刻んでいく。
 周助の手が、唇が、下肢へ近づくにつれて、の鼓動の早さが増す。
 声を抑えたいのに震えた手で口元を塞ぐことはできなくて、周助から熱を与えられる度に、吐息に似た甘い声が唇から零れる。
「や…ッ…しゅ…う…ッ」
 ビキニのショーツに周助の指がかかり、腰を持ち上げられ、あっという間に脱がされた。
 の脚からビキニを取り去ると、周助は股間に顔を埋める。
 叢の中に埋もれる真珠を舌で舐めると、甘い嬌声が上がった。
 彼女のもっとも敏感なそれを舌先で攻めながら、時々強く吸い上げる。
 そうしながら、周助は蜜で濡れているくぼみに指を差し入れた。充分に潤ったそこは、周助の二本の指をゆっくり飲み込んでいく。
「いつもより感じてるね。フフッ、嬉しいな」
 反論したくても、周助の動きがそれを許してくれない。
 ぐちゅぐちゅと卑猥な水音がこぼれ、奥から蜜が溢れ出す。
 えぐるように中をかき回され、弱いところを突かれ、唇から零れるのは嬌声だけ。
 泉からとめどなく溢れる蜜に太陽の光が反射して煌く様に、周助は色素の薄い瞳を細めた。
 扇情的で、艶かしくて。とても愛しい。
 波音に混じり、指の抜き差しに合わせて漏れる、ぐちゅぐちゅとした水音が周囲に響く。
 は恥ずかしくて身体を捩ろうとしたが、周助によってなんなく阻まれてしまった。
「ダメだよ」
「やっ…ああッ…」
 三本に増やされた長い指が、敏感なところを寸分の狂いなく攻める。
「ッ…やああっ…あ、んっ…ふああッ」
 おかしくなってしまいそうで、あまりの快感に意識が朦朧としてくる。
 大きな波に飲み込まれてしまいそうだった。
「あッ…しゅ、すけぇ…っ」
 周助の頭を震える手で抑えながら掠れた声で名を呼ぶと、ズプっとイヤらしい水音がして指が引き抜かれた。
 周助は指を滴り落ちるほどにまとわりつく蜜を、舌で味わうように舐め取る。
の蜜、美味しい」
 眼前で嬉しそうに呟く周助から、は頬を真っ赤に染めて視線を逸らした。
 そういうことをしないでといつも思うけれど、恥ずかしすぎて言えない。
の蜜もっと味わいたいけど…ねだられたら断れないね」
 いつもしているように、指でいかせた後、口でもいかせてあげたかったのに、はもう限界らしい。
 屋内のベッドの上、小さなベッドランプの明かりの中ではなく、砂浜の上で、真昼間。
 その状況がの限界が近くなってしまった要因だろう。
 は恥ずかしがって欲しいとは言わない。無論、欲しいと言わせない状況に追い込んでいるのは他ならぬ周助なのだが。
 けれど、の新しい一面が見られたことは嬉しい。
 他の誰も見たことがないと思うと頬が緩む。
「いい?」
 の細い両足をかかげて、熱く猛っている楔を泉の入口に押し当てる。
 白い腕が首に回され抱きついたのを合図に、周助は楔を泉の中へ挿入した。
 蜜で溢れるそこは、ゆっくりと周助の楔を飲み込んでいく。
「んっ…ッ」
 の様子を見ながら、周助は腰を押し進めた。
 一気に貫きたいという気持ちがあるけれど、無理はさせたくない。
 大切に愛したい。
 周助は楔を全部入れると、一度動くのをやめた。
「大丈夫?」
 汗で額についた黒髪を優しく梳きながら訊くと、は微笑んだ。
 周助の優しさに心が温かくなる。
 それと同時に、もっと周助で満たして欲しくなる。
 なにもわからなくなるくらい、周助に愛されたい。
「…周助で…」
 いっぱいにして…。
 周助に抱きついて、耳元でそっと囁く。
 甘えるような囁きに周助は瞳を細めて微笑んで、の唇に甘いキスを落とした。
「僕のことしか感じられないようにしてあげる」
 言い終わると同時に周助が律動を始める。
 腰を引いては打ち込んで、引いては打ち込む。
 その合間にもの弱い所を先端で突くのを忘れない。
「ッは…アッ…ふっ、あああッ…っ」
「…ッ…っ」
「…っふぅ…んああッ…やあッ」
 えぐるように突き上げられ、擦られ、揺すぶられて、の黒い瞳の眦に雫が浮かぶ。
、愛してる…ッ」
「はッ…あいし…っ…しゅ…すけぇ…ッああっ」
 答えようとしても、貫かれ突き上げられていては言葉にならない。
「…しゅうッ…もっ…ああッ」
 悲鳴に似た喘ぎ声がの唇から零れる。
「うん、いかせてあげる」
 僕もそろそろ限界だからね。
 そう心の中で呟いて、薄く瞳を開け潤んだ瞳で見上げてくるに微笑む。
、ごめん」
「え…んッ」
 不意に謝られて何かと問うより先に、深いキスで声が封じられる。
 周助は泉の入口まで自身を引き抜いて、一気に最奥まで突き上げた。
 の中がビクビクと痙攣し、周助の楔を締め付ける。
 周助は一際強い締め付けに僅かに柳眉を顰めて、の中へ熱い白濁を吐き出す。
 ドクドク脈打つ周助を感じながら、は意識を手放した。
「愛してる…」
 気を失ってしまったの汗ばむ額と頬にキスをして、周助は幸せそうに微笑むと、の中から自身を引き抜いた。
 抜いた瞬間、赤く色づく唇から零れた小さい呻きにクスッと笑いながら、周助は細い身体を抱き上げる。
 周助は細い身体を抱えながらから脱がせた水着を拾い、砂浜に敷いたパイル地のタオルを手に持って、コテージへ向かった。


 が瞳を開けると、自分を覗き込む周助の顔が映った。
「気がついた?」
「周助…私…」
 身体を起こそうとし、身体が重いことに気がつく。
 その理由はすぐにわかり、はかあっと頬を赤く染めた。
「クスッ、可愛かったよ」
「なっ…」
 二の句が継げないに周助はクスクス愉しそうに笑って、こめかみにキスをした。
「身体は痛くない?」
「ん、平気」
「あ、の身体はキレイにしておいたから安心して」
「しゅ、周助ッ!」
 は起き上がり、手近にあったものを投げつけた。
 周助は反射的に腕で顔をガードして、飛んできた枕の直撃を避けた。
「中に出しちゃったからキレイにしないと…ね?」
 にっこり微笑む周助に、は恥ずかしがり怒るよりも、血の気が引いた。
 いつも周助は避妊してくれていたから安心していたのだが、先程の行為ではしていなかったのを思い出す。
「それで、そのことで話があるんだ」
「え?」
「歩けそう?」
「え、ええ、多分…」
 周助の手を借りてはベッドから降りる。
「服はそれでよかった?」
「え?あ、うん、どれでも平気」
 訊かれて、服を着ていたのだということに初めて気がついた。
 おそらく身体を拭うか洗うかして、服を着せてくれたのだろう。
 裸で寝かされているのと、起きたら服を着ているのとどちらがマシなんだろうと少し思う。
 ただ、下着まで着せてくれたのはかなり恥ずかしい。
?無理そう?」
「あ…ううん、平気」
 顔を覗きこまれて、は首を横に振った。
 それに安心したように周助の切れ長の瞳が優しく細められる。
 柔らかな微笑みにドキンと胸が高鳴った。
「じゃあ、行こう」
 周助はの手を引いて、コテージの外へ連れ出した。
 真っ青に広がっていた空は、オレンジ色に染まっている。
「もう夕方になってたのね…」
 少し早めに昼食を取って、それから海に出て、思い切り遊ぶ予定だった。
 けれど、その予定はなくなって、浜辺で愛し合うなどと最初で最後のことに…。
 は青空が夕焼け空になる前のことを思い出して恥ずかしくなった。
 今が夕方でよかった。顔が赤くなったのに気がつかれなくて済む。
「夕陽がキレイだね」
「ええ。海って見る時間で表情が変わるのね」
 夕陽を弾いてオレンジ色に輝く海。水面に揺れる光がとてもキレイだ。
「もう少ししたら、海に沈む太陽が見られるんじゃないかな」
「え?ホント?見てみたいわ」
「フフッ、あなたならそう言うと思った。座って見ようか」
「ええ」
 二人は浜辺に並んで座った。
 周助の話というのはなんだろうかと気になるが、話し出さない恋人にどうしようかと、目の前の光景に意識が向かない。
 そわそわして落ち着かなくて横を見ると、周助がこちらを見ていた。
「な、なに?」
「キレイだなって見惚れてたんだ」
「も、もうっ、周助はすぐそういうこと言うんだから」
「クスッ、本当だよ。…だから、僕だけのものにしたい」
 光の加減で金色に見える周助の切れ長の瞳に見つめられて、その瞳の真剣さには瞬きも呼吸もできなくなった。
、僕と結婚して欲しい」
「…私で…いい、の?」
「僕が欲しいのはだけだよ。しか欲しくない」
「周助…」
 涙が溢れて止まらない。
 夢、だった。
 いつか周助と結婚できたら嬉しいと思っていた。
「返事、聞かせてくれる?」
「…う…れしい…」
 は涙で濡れた瞳で微笑んだ。
 周助は微笑み返しての左手を取ると、細い薬指に銀色に光る指輪をはめた。
 指輪に嵌められたダイヤモンドが夕陽を弾いて輝く。
「二人で幸せになろう」
「はい…」
 大切そうにぎゅっと左手を握り、右手で包み込んでが微笑む。
「愛してるよ、
 周助がを腕の中にぎゅっと抱きしめる。
 波音が響く浜辺で、二人はどちらともなく唇を重ねた。




END

書中見舞いイラストを頂いたお返しに千波矢さんへ。
Anjelic Smile / Ayase Mori

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