4月のある昼下がり、綾瀬はいつものように近くの公園へ写真を撮りに出かけた。

綾瀬が結婚してこの町に住むようになってからもうすぐ一年になる。
すっかり通い慣れたこの公園はいつの間にか新緑で溢れかえっていた。
全てがきらきらと輝きに満ちていて、木々も新しい季節がやってきたことを喜んでいるかのように感じられる。

綾瀬は咲き始めたツツジや花水木の写真を撮ってまわった。
周助が日本にいない間の四季の移り変わりをこうやって写真に収めるのが最近の彼女の日課となっていた。

一通り撮り終えた後、深く呼吸をついて真っ青な空を見上げる。

(周助、今頃・・・頑張ってるだろうな。)

空の向こうに彼を思いながらそっと瞳を閉じ、綾瀬は彼の遠征先での無事と活躍を祈った。




thanks.




公園を出て家に帰り着いた綾瀬はドアを開けようとして、家のカギがかかっていないことに気付き、ハッとする。

(・・・閉め忘れた?それともまさか・・・空き巣、じゃないでしょうね?)

周助が居ない間の留守を預かっているというのに、空き巣に入られたなんてことになったら彼に申し訳が立たない。
だが、プロテニスプレーヤーとして世界中を飛び回り、留守にすることが多い周助は、綾瀬のことが心配だからとセキュリテ
ィー対策は万全にしてくれていたはずだった。

それを考えると、やはりカギを閉め忘れただけなのだろうか・・・?

不安に襲われながらも、綾瀬は音を立てないように注意しながらそっとドアを開けた。
僅かに開けたドアの隙間からそっと玄関の様子を覗き見ると、出かけるときには無かったはずの、見慣れた靴がきちんと揃
えて置かれているのが目に入った。


――周助だ!


そう思って家に駆け込んだ瞬間、部屋の中に居た周助が物音に気づいて玄関まで迎えにきてくれた。

「お帰り、綾瀬!待ってたんだよ。」

「周助・・・どうしたの?週末まで遠征だったんじゃ・・・?」

「うん、そうなんだけど。今朝自分の試合が終わってね。それから急いで帰ってきたんだ。」

「どうして・・・?まさか、どこか怪我でも?」

「違うよ。綾瀬にこれを渡したかったんだ。」

心配そうな顔をしている綾瀬に、周助は微笑みながら後ろ手に持っていたものを差し出した。
・・・それは金色に輝く、メダルだった。

「周助・・・じゃあ、優勝したのね?おめでとう!」

「ああ、ありがとう。今日は綾瀬の誕生日だからね。これは綾瀬に・・・。」

周助は綾瀬の首に金色のメダルをかけた。

「誕生日・・・覚えててくれたの?」

「クスッ・・・忘れるわけないだろう?お誕生日おめでとう、僕の大事な綾瀬。」

「ありがとう・・・周助・・・嬉しい!」

綾瀬は周助の首に腕を回して抱きついた。
周助は綾瀬をしっかりと抱き締め、その愛らしい唇に何度もキスを落とした。

「お帰りなさい!・・・会いたかった・・・」

「僕もだよ、綾瀬・・・いつも傍にいてあげられなくて、ごめんね。」

「そんな・・・!謝らないで?周助が遠征で傍にいられなくたって、私も周助もお互い信じあってるし支えあってるの。
今日だってこうして私のために無理して帰ってきてくれて・・・私は周助のその気持ちだけで充分嬉しいんだから。」

「ありがとう・・・綾瀬。今日はどうしても勝ってこのメダルを綾瀬への誕生日プレゼントにしたかった。
そう思って試合に臨んだら、自分でも信じられないほどの力が出せたよ。これも綾瀬のおかげだね。
いつもここで見守ってくれている、綾瀬のおかげだ。本当にいつもありがとう。」

「嬉しい・・・私にとって何より嬉しいプレゼントだよ、周助。・・・あ、そうだ!優勝したんだから今夜はお祝いしなきゃね?」

「クスッ・・・どっちのお祝い?今日は綾瀬の誕生日でしょ?」

「あ、そうだった・・・ふふ・・・じゃあ、二人分のお祝い、ね。さあ、張り切って料理しなくちゃ。」

「僕も手伝うよ。今日は綾瀬のお祝いでもあるんだからね。」

そして二人は仲良くキッチンに立ち、お互いを祝うための料理を作って乾杯をした。

その日の不二家では久しぶりに帰ってきた周助と綾瀬の幸せな笑い声がいつまでも絶えることはなかった。



fin



2004.4.21
nao matuno

Happy birthday dear Ayase sama vv


綾瀬さん、4月19日のお誕生日おめでとうございます。
すこし遅くなってしまったのですが、お祝いの気持ちを込めて
ささやかなドリームを贈らせていただきます。
いつもお世話になっております感謝の気持ちを込めて・・・。

松野なお

 

【Les heureux moments】の松野なお様に頂きましたv
誕生日当日の日記で「誕生日プレゼントは周助さんの勝利が欲しかった」と書いたのを
なおさんが見て下さっていて、こんなに素敵なバースデードリームをプレゼントしてくださったのですv
突然の贈り物、とっても嬉しかったです。なおさん、ありがとうございました。
大切にさせて頂きます。

 

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