「じゃぁ、約束。僕が、その夢をかなえてあげる」
「本当に?」
「本当。だって、僕はキミの笑顔が大好きだから、ね。」
小指と小指を絡ませて。
その日、私たちは約束した。




ゆびきり





あったかい陽射しと、優しい笑顔。
それだけで、私はきっと、幸せな気分になれる。
人が聞いたら空想の中だけだって笑われるかもしれない。
でも、それでも。

「おはよう、

やわらかい朝日が、窓からさしこんで、少しだけまぶしい。
薄く目を開けると、そこには優しい笑顔が、飛び込んできた。

「…しゅ…くん」
「フフッ、まだ寝ぼけてる?もう起きないと」

そう言ってその優しい笑顔が少しだけ離れる。
その笑顔がほんのわずか、はなれただけで、ちょっとだけ、寂しくなった。
思わず、袖をくいっと引っ張る。
きょとんした顔をして、その顔はまた私に近づいた。

「どうしたの?」
「ううん…」

なんでもない、と小さく首を振ると、彼はくすっと笑って私の頬にふわりと触れた。
あったかい指先が頬をつつく。
それがなんだかくすぐったくて、私もちょっとだけ笑ってしまった。

「…また負けちゃった」
「勝ちたかったの?」

本当は、どっちとも言えない。
彼のぬくもりが離れるまで、ずっとそばにいたい。
彼のぬくもりが離れてしまったら、そこで目を覚ましたい。
だって、彼がいないのはすごく寂しいから。

「だって、お嫁さんが朝寝坊なんて、周くんに悪いもん」
「そんなことないよ。 の寝顔、好きだから」
「…もう!!」

いっつも、そうやって余裕を見せて笑ってる。
そんな周くんに勝てるわけはないから、その分、朝くらいはちゃんと起きて…って決めてたのに。

「そんなに気にすることじゃないよ。
 僕は、目がさめたときに近くに がいないと嫌だな」
「…周くん、朝から恥ずかしいこと言わないでよ…」
「そう?そんなことないよ、本当のことだもの」

そしてまた余裕そうな笑顔を見せる。
あぁ、どうやってもかなわない。
それはずっとずっと前から知っていたけど。




◇◆◇◆◇





ほんの半年くらい前のこと。
久々に休日にデートが出来ることになって、楽しく過ごしていた。
外を歩いているときに、偶然出くわした結婚式。
純白のドレスに包まれた花嫁はすごく幸せそうな顔をしていた。

もドレス着たい?」
「そりゃぁ、私だって女の子だもん」
ならきっと似合うよ」
「そう?ありがとう」

そんな他愛ない話をしながら、その幸せそうな花嫁と花婿を見ていた。
優しい暖かい笑顔に迎えられている今日の主役の二人。
そしてそれを喜んで迎えている笑顔の人たち。
きっと幸せなんだろうなぁ、なんて思ってた。

「僕たちなんて、やっとデートが出来たって喜んでるのに、うらやましいね」
「周くんでもそんな風に思うの?」
「あたりまえじゃない。僕だって、ずっと に会いたかったんだから」
「そう、なんだ…へへ、嬉しい」

本当に、嬉しかった。
私はすごく周くんに会いたかったけど、なかなか会う時間もとれなかったから。
でも、周くんもそう思ってくれていた…そう思うと、すごくうれしかった。

「そういえば、前に の夢、聞いたことあったよね」
「え?」
「結婚したら、っていうやつ。中学のときに」
「そ、そんな昔のこと、覚えてるの?!」
「あたりまえじゃない」

忘れるわけがないよ、と周くんは笑った。
どちらかといえば忘れていてくれるほうが嬉しい。
だって、中学の時のことだから、本当に夢のように話していたから。

「もう一回、教えてくれる?」

楽しそうに、聞いてくる。
またからかわれてる、と思ったけど、今の周くんがそれを聞いたらどう思うのか、
ちょっとだけ興味があった。

「……だんな様より早く起きて、私が起こしてあげるの。」
「うん」
「起こす前にちゃんとごはんを作ってね、私が起こしにいったら、優しく微笑んでくれるの」
「うん」
「絶対に寝起きに機嫌悪くしたりしない人でね、必ず微笑んでくれるんだ」

中学生にしては、幼い夢だったなぁ、なんて今では思ったりもする。
でも中学1年だもの、それくらいかわいらしい夢持っててもおかしくないと思わない?

「ねぇ、
「え?」
「そのあとのこと、覚えてる?」
「その後?」

周くんが言っていることがよくわからなくて、私が聞き返すと、周くんはにっこりと笑った。

「その後、僕が言ったこと」
「……覚えて、ない…かも」

それは、うそ。
ホントは覚えてる。
だって、あんなこと周くんが言ってくれると思ってなかったんだもの。
だけど、恥ずかしくて、そんなこといえるわけがない。

「うそつき、
「う、うそじゃないよ?」
「フフッ、いいよ、許してあげる。
 僕は、"その夢をかなえてあげる"って言ったんだよ」
「…うん」

にっこりと笑ったその笑顔は、揺らぐことなく、微笑んでいる。
私はじっと、周くんを見ていた。

「それでね、そろそろ、夢をかなえてあげたいな、って」
「…え?」
「約束、したでしょ?」
「……周くん?」

す、と右手の小指をすこしだけ立てて、私の右手の小指と絡ませる。

「約束、したよね。こうやって」
「……うん」
「僕もね、夢があるんだ」

小指を絡めたまま、微笑んだ周くんは私に近づく。
とん、と絡めた小指が周くんの胸に触れた。
すぐ隣に、周くんの顔があった。

「朝起きたら、隣に にいて欲しいんだ」





◇◆◇◆◇





「ねぇ、

まだベッドにもぐったままの私に、ベッドサイドから優しく話し掛けてくる。
その声のぬくもりさえも、直接伝わってきそうな感じ。

の夢、かなえてあげられなくてごめんね」
「…え?」

突然何を言い出すのかと私は目を見開いてしまった。
でも周くんは笑顔のまま。

の夢、叶えてあげたいんだけど、ちょっと難しいんだ」
「…どういう意味?」

こんなに幸せな朝を迎えているのに。

「だって、 が僕より早く起きちゃうと、僕が寂しくなるからね」
「周くんっ!」
「ねぇ 。約束、しよう?」
「約束?」

きょとんと私が見ていると、周くんは私の手をとって、小指を絡ませた。
絡んだ小指に、唇を近づけた。
ふわりと触れたところから、優しいぬくもりが伝わってくるような気がする。

「神様の前じゃなくて、僕と二人だけの約束。
 僕は、ずっと と一緒にいるから…だから、いつも の優しい笑顔を、見せてね」

そう言って、もう一度私の小指に唇が触れる。
何の意識もしていなかったのに、私は笑っていた。

「周くんも、ずっと一緒にいて、笑っていてね」
「もちろん」

今度は小指じゃなくて、唇に。
ふわりと優しい、キスが降りてきた。

「「二人だけの、約束。」」

あったかい陽射しと、優しい笑顔。
それが私たちを、世界中の誰よりも幸せにしてくれる。
ね、ちゃんと、夢は叶ってるよ。
だって、ここに周くんがいるんだから――――





30,000Hitありがとうございます〜v

いやぁ、こんな日がくるなんて!
ありがたいお話でございます。
今回は花音ちゃんからリクエストを頂いて書きました。
リクエスト内容は「不二くん未来夢で甘いお話」と言うことでした。
…玲に甘いお話を書けというのが間違いだってば、花音ちゃん…。(汗)
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
これからもよろしくお願いいたしますv

『Sweet Cafe』
── Rei ──

 

【Sweet Cafe】様より30000HIT記念フリードリームを頂きました。
周助くんとの甘くて優しい朝の時間・・・。
こういう周助くん、やっぱり好きだな〜。
ヒロインが「周くん」って呼んでいるのもツボですv
甘くて素敵な夢をありがとうございました。

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