The First Meeting




「あれっ?…ね、不二?不二〜!!」
「ん…?」

毎年元旦には恒例となっている、仲間との初詣。
約束の待ち合わせ場所へ出かけようと歩いていると、
どこかで聞き覚えがあるようでいて、ないようでもある、
明るい声に背後から呼びかけられた。
振り返ってみると、同じクラスの が笑いながら手を振っている。

?」

驚いている僕のところへ、 はとても嬉しそうな表情をして駆け寄ってきた。
朝日を受けてきらきらと輝いている笑顔が眩しい。

「あ〜、やっぱり不二だった。あけまして、おめでとう」
「あけましておめでとう、 。…偶然だね?」
「ほんとそうよね〜、今年初めに出会ったクラスメートが不二だなんてびっくり。
 皆に自慢しちゃおうかなあ、ふふ」

いつも、学校で会う とのギャップに、僕は少々驚いていて。
言葉を返すことができずに、ただ目の前にいる のことを見ていた。

そのうちにふと、 の顔色が微妙に赤いことに気がついた。
それに、吐息に混じってほんの少しアルコールの香りが漂ってくる。
もしかして、とは思ったけど、 が冬休みだからといって羽目をはずして
お酒を飲むなんてことはちょっと想像できない。

と、いうことは…

「ねえ、 ?」
「ん〜、なに?」
「お屠蘇でも飲んだ?」
「ちょっとだけ飲んだけど、それがどうしたの?」
「フフっ」

やっぱり。
がいつもと違うように見えるのは。

「なによーっ!笑ってないでちゃんと言いなさいよ」

怒ったのか、精一杯睨んでみせる だけど、その瞳はどこか焦点が合っていない。
その上、 自身は睨んでいるつもりなのかもしれないけど、
その表情はドキッとするくらい艶っぽくて…まるで僕を…誘うようで。

…酔っ払ってる か。
こういう姿は滅多に見られるものじゃない。

偶然出会えたこといい、こういう を見られたことといい、
今年は元日からなんとも幸先がいい。
この分だと今年はいい年になりそうだ、なんて考えて、
少しばかり気持ちが高ぶってくるのを感じた。

それにしても、お屠蘇くらいでこんな風になるなんて、
やっぱり は思ったとおり、可愛いよね…。

「…… 、酔ってるでしょ?」
「へ?…何言ってんの?」
「フフ…ははは…」
「ちょ…笑わないでって言ってるのに!」
「ごめん。あまりにも可愛いからさ」

言ったとたん、 の表情が変わった。
今度はアルコールのせいじゃない赤みが頬の色を変えていく。

酔ってても、僕の言うことはちゃんと聞いててくれてるんだね。

がこんなにお酒に弱いなんて、新しい発見だね」
「もう…また馬鹿にしてる」
「してないよ」
「してるじゃない」
「してないったら」

の腕を掴んで僕の方へ引き寄せると、僕の好きなブラウンの大きな瞳が、
もうひとまわり大きくなった。

「ふ…不二…?」

その瞳の中に僕が映っていることを確認して、至近距離で微笑みかける。

が好きだから、だから馬鹿になんてしてないよ」
「……え…っ…?」

驚いて絶句している可愛い の、ずっと触れてみたいと思っていた、
柔らかくてつやつやとした桃色の頬を唇で奪って…それから耳元で囁いた。
「最初に出会えたのが僕で嬉しいよ。今年も、よろしくね」






fin


2006.1.1


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あけましておめでとうございます!
新年創作は無理かと思っていたのですが、なんとなく
書けてしまったので(笑)アップしました。
お世話になりました皆様へ感謝の気持ちを込めまして、
このドリームは当サイト最後のフリー配布ということで
ここに置いておきます(サイト閉鎖・移転予定のため)。
こんなささやかなもので申し訳ないですが…(汗)
もしもお気に召して頂けましたら、
どうぞお持ちくださいませ(テキストのみ)。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします!
「Les heureux moments」
Nao Matsuno

という訳で、松野なお様宅でフリー配布されていたのでお持ち帰りさせていただきました。
新年早々、好きな人と逢うなんて幸せな一年を約束されたみたいです。
イタズラな周助くんもツボですv
なおさん、素敵なSSをありがとうございました!

 

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