僕は君だけを想う




 部屋の窓を開けると、風が部屋の中へ流れ込んでくる。
 まだ朝日が昇っていない時間だから、風は身体に心地いい温度だ。
 これがもし昼間だったら心地いいなんて言っていられない。
 窓際の出窓にある鉢植えのミニヒマワリの香りを乗せた風がベッドに眠る愛しい人の髪を揺らす。
「……ん…」
 赤く色付く唇から、僅かに声が溢れた。
 起こしちゃったかな?
 そっと顔を覗きこんで、柔らかく滑らかな色白の頬に触れる。
 すると、可愛い口元が笑みの形を描いた。
「…しゅ…すけ……」
 僕の名前を呟いた唇から寝息が聴こえ始める。
 寝ている時でも君は僕を想ってくれているんだね。
 君が起きたらって思っていたけど、どうやら我慢できそうにない。

 幸せすぎて。
 君が愛しすぎて。

「愛してる」
 耳元で囁いて、柔らかい唇をキスで塞ぐ。
「…っん!?」
 閉じられていた黒い瞳が開いて、僕の顔を見つめた。
 白い頬が瞬く間に桜色に染まっていく。
「しゅう、すけ?」
「なに?」
「なにって…それは私が訊きたいんだけど」
 僕はクスッと笑って、形のいい額にキスを落とす。
「ねえ、抱いてもいい?」
 耳元で甘く囁くと、細い身体が身じろいだ。
 何度も肌を重ねているのに、まだ恥ずかしがるんだね。
 フフッ。そういう可愛いことされると、意地悪したくなっちゃうよ?
「……もっと君が欲しいんだ。僕だけが知ってる可愛い声を聴かせてくれるよね」
 細い身体をぎゅっと抱きしめて囁くと、耳まで桜色に染まった。
 そして、首が縦に小さく振られた。
 どうして君はそんなに可愛いことするのさ。
 手加減なんてしてあげられそうにない。

 君の中を僕でいっぱいにしてしまいたくなる―――。

「愛してるよ」
「……私も」
 柔らかな唇を熱く深いキスで塞いで、細い身体を昨夜の名残で少し乱れたままのリネンに押し倒した。




END



BACK