柔らかな春の陽射しが心地よく感じる中、はデートの待ち合わせ場所に向かった。
 彼とは自然公園の入り口で待ち合わせをしている。
 今日はお花見日和のよい天気で、週末ということもあって家族連れやカップルの姿がある。行楽地だから仕方ないと思っても、二人きりで花見をしたいなと思ってしまう。
 来年は人がいないところでお花見したいって言ってみようかな。
 そんなことを考えていると、緑がかった瞳に桜の樹の下にいる恋人の姿が映った。
 微笑む不二に、にも自然に笑みが浮かぶ。
 早く傍に行きたくて不二に駆け寄った瞬間、心臓が跳ねた。
 ふわりと桜の香りを乗せた風が吹き、光の加減で金色に見える髪を揺らす。
 柔らかな笑みを見せて「ここだよ」と言うように手を振る彼の姿にドキドキが止まらなくなる。
 男の人でこんなに桜が似合う人はいないと思ってしまうくらい、絵になっている。
 不二と桜がまるで別の空間に存在しているような、そんな錯覚さえしてしまう。
?どうしたの?」
 首を傾げながら不二はの瞳を覗き込む。
 秀麗な顔で間近に迫られたは、ハッとなって慌てて首を左右に振った。
「な、なんでもないっ」
「クスッ。それならいいけど。でも、顔が赤いよ?」
「え、あの、そ、それは…えっと…」
 余裕の不二に、わかっていてわざと言ってからかって楽しんでいるのではないか、とはちょっと思った。
 優しく微笑んでいるけれど、色素の薄い瞳が楽しそうにしている気がする。
「それは、なに?」
 不二はクスクス笑いながら、長い指での薄茶色の髪をさらりと梳く。
 その仕草が顔から火が出そうなくらい恥ずかしくて、それなのにカッコイイと思ってしまう自分は相当彼に溺れてしまっている。
「……周助と桜が似合ってて…」
 カッコイイなって見惚れてたの…。
 視線を合わせて言うのは恥ずかしくて、俯きながら小さな声で言ったは、耳まで赤く染めている。
 彼女の口からぼんやりとしていた様子の原因を聞いた不二は、一瞬切れ長の瞳を瞠って、ついで細めると少し照れたように微笑んだ。
「フフッ、ありがとう。 けど僕よりの方が桜が似合うよ。もちろん桜だけじゃなくてどんな花も、ね」
 不二は耳元で甘く囁いて、の桜色に色づいた柔らかな頬にキスをした。




END



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