Which




「ねえ、君はどっちだと思う?」
「え?どっちって何が?」
 は黒い瞳を瞬かせて、訝しげに首を傾げた。言葉と仕草は唐突過ぎる問いに対して当たり前の反応だ。
 二人がいるのは、郊外にある公園の一角。学校からの帰り道、「公園に寄り道していかない?」と不二に誘われたからだ。
 午後のうららかな日差しの中を散歩するのは気持ちよく、いい気分で散策していた。
 新作映画の話やコーヒーの話に花を咲かせながら歩いていると、白い梅の花が咲いていたので、立ち止まってそれを見上げていた。
 そんな時に問われても答えようがない。
「春は別れの季節か、それとも出会いの季節か」
 どうして急にそんな事を訊くのだろうと不思議に思ったが、不二が答えを欲しそうな顔をしているので、は考え込んだ。
「………両方、かな」
 今は三月。卒業するのは二年先の事だが、進級したらクラスが別れる友人がいるだろう。けれど、新しい出会いも待っていると思う。
 別れの数だけ出会いがあり、出会いの数だけ別れがある。そんな風に思った。
 の答えに不二はフフッと彼独特の笑みを零す。
「どうして笑うの?」
 気分を害したに不二は「ごめん」と謝って。
「おかしくて笑ったんじゃないよ。君らしいなって思ってさ」
 不二は緩く首を傾けてにっこり微笑む。
「…不二くんは、どう思ってるの?」
「僕は、どっちもだけど、どっちでもないかな」
「それって私と同じってことじゃないの?」
「答えは同じでも、思ってる事はと違うと思うな」
「違う?」
「別れてそのままってことはないだろうし、同じ空間にいられないだけで、会うことはできる。 ね?の考えとは違うだろ?」
 その言葉にはそう言えばそうだ、と思った。友人なのだから、進級したら次に偶然会うまで会わない、なんてことはないのだ。
 そうね、とは言おうとしたのだが、不二の様子がいつもと違う気がして、首を傾げた。
 不二の瞳がなんとなくだけれど、寂しそうな、そんな気がした。
「……周助くん今日はなんだかいつもと違う」
「そうかな?……うん、そうかもしれない」
 苦笑する不二には心配そうに顔を曇らせた。
「大丈夫だよ。心配させてごめん。ただ…」
 不二は言葉を切って、を腕の中に閉じ込めた。
「…僕は君だけは絶対に離したくないんだ。だからずっと僕の隣にいて」
 耳元でそっと囁かれ、は不二の胸に頭を預けて頷いた。




END

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