Reason




「あ、周助、外見て」
 の視線を追うと、灰色の空から降っている雪が見えた。
 予報では夜半から降ると言っていたけど、早まったみたいだ。
「…積るかしら?」
 窓から外を眺めながら言うに目を瞠る。
 まさか君の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
 もしかしたら、一生聞かないかもしれないとさえ思っていたくらいだから。
「積って欲しいの?」
 寒いのが苦手なのに珍しい。
 学校に行くんじゃなかったら、雪が降ってる時に外へ出るのは嫌。
 そう言うくらい、君は雪が好きじゃないのを知ってる。
 そんな事を僕が思っているとは知らずに、黒い瞳は外を見つめたまま。
「…積ったら……帰らなくていい理由にするの」
 呟いたの頬が赤く染まっていく。
 君はどれだけ僕を虜にするつもりなのさ。
 もうこれ以上、降参できないっていうのに。
 積らなくても、僕が君を帰せないよ――家に誰もいなかったらの話だけど。
 それに、ただ帰りたくないって意味で言っただけなのもわかってる。
 だから嬉しいのに複雑な気持ちで、胸の内で溜息をつく。
「じゃ、泊まっていく?母さんも姉さんも歓迎するだろうし」
「え…でも、いいの?」
「帰りたくないんだろ?」
「…うん。もうちょっと周助と一緒にいたい」
 小首を傾けては恥ずかしそうに笑う。
「じゃあ、ちょっと母さんに言ってくるよ」
「お願いします」
 ぺこっと頭を下げるのがなんとも可愛らしくて、思わずクスッと笑みが零れた。




END

2010年BD企画用Web拍手

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