Ring




「ありがとう」
 心配そうな瞳で僕を見つめるを安心させるように笑って、差し出されたプレゼントを受け取った。
「……フッ…フフフッ。ったらなんて顔してるの」
 そんなに不安そうに見つめなくても、僕が君からのプレゼントを気に入らないなんて事ある筈ないのに。
 君がくれるものなら例え道端に落ちている石だとしても嬉しい。
 欲しいのは【君の想い】だから。
 君の想いがこもっているものなら、なんだって嬉しい。
「これ…」
 箱の蓋を開けて中を見て思わず目を瞠った。
「あの、気に入らない?」
 沈んだ声に僕は我に返って、首を横に振る。
「まさか。はセンスがいいなって思ってただけだよ」
 シルバーのシンプルなデザインは僕好みだったから、無言になっただけだと説明する。
 アクセサリーの類は普段からつけないけれど、がくれた物なら別だ。
「本当?」
 まだ不安そうな顔をしたままのににっこり笑いかける。
「本当だよ。ねえ、。どうしてこれにしたのか訊いてもいい?」
「え…それは…」
 質問を投げると、は頬を赤く染めて俯いてしまった。
「笑ったりしないから教えて?」
 僕から逃げてしまわないように細い身体を腕の中に閉じ込めて、視線を僕に向けさせた。
「…周助、今日で18歳だし…その…」
 耳まで真っ赤に染めながらも、は僕から視線を逸らさない。
 けれど、抱きしめている身体が微かに震えている。
「…この前、雑誌に載ったじゃない?だから女の子が…」

 放っておかないかもって思ったら不安になったの。

 小さな声で囁くように言う姿が愛しくて、ぎゅっと細い身体を抱きしめる。
「心配しなくても、僕は君のものだよ。勿論、君も僕のだよ」
 耳元で囁いて身体を離すと、はくすぐったそうに微笑んでいた。
「…周助」
「ねえ、
「なに?」
「一生、僕にだけ微笑んで欲しいんだ」
 きょとんとした顔で首を傾げるの華奢な左手を取って、薬指に銀色に輝く指輪をはめた。
 黒い瞳を驚きに瞠るにクスッと微笑む。
 僕が今日渡そうと用意していたのは、偶然にもがプレゼントしてくれたのと同じ、銀色の指輪。
 婚約リングだから、彼女の誕生石――真珠がついたプラチナの指輪だ。
「僕と婚約してくれるよね?」
「え…あ…その…」
 改めて言うと、わかってくれたらしいは、白い頬を真っ赤に染めた。
「ダメかな?」
 その言葉には大きく首を横に振った。
「………嬉しい」
「ありがとう、
「そんな……」
 言葉に詰まるに僕は笑って。
、僕の指にはめてくれる?」
 シルバーの指輪が入った箱を差し出すと、は頷いて両手で受け取った。
 恥ずかしいのか、は俯き加減で指輪を僕の左手の薬指にはめた。
 僕の指に指輪をはめても顔を上げる気配がないを抱き寄せて囁く。
「…、愛してるよ」
「………私も、愛し――」
 ようやく顔を上げてくれたが愛を紡ごうとしてくれたけど、それが待てなくて柔らかな唇をキスで塞いだ。




END

2010年BD企画用Web拍手

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