瞳の先に 〜 an extra 〜




 空が暁色に染まっていく。
 太陽はもう間もなくすれば、山の彼方へ沈むだろう。
 優しい夕陽の色が隣にいる人みたい。
 そんなことを思っていると、柔らかい声が降ってきた。
「夕陽が好きなの?」
 視線を向けると色素の薄い瞳を細めて微笑む不二がいた。
 彼の微笑みに胸がドキンと高鳴る。
 いつも笑顔の素敵な彼だけれど、いつものそれとは違っていてドキドキする。
 切れ長の瞳はとても優しくて。
 向けられる空気は温かくて。
 微笑みは蕩けてしまいそうなほど優しくて。
 夢を見ているのかと思ってしまいそうだ。
「クスッ。僕の顔に何かついてる?」
「え、な、なに?」
 不二に見惚れていたに彼の声は届いていなかった。
 慌てた様子のに不二は可笑しそうに笑う。
「ふ、不二くん?私なにか可笑しいこと言った?」
 困惑した表情を浮かべる彼女に不二はクスクス笑った。
 無意識なのだろうが、不二はが可愛くて仕方がない。
「いや。可愛いなと思って」
 不二は言いながら繋いでいる手の力を僅かに強めた。
 包み込むように優しくきゅっと握られて、またドキドキが増える。
 こんなに近くて彼の笑顔を見たことはない。だから尚更だった。
 じっと見つめられる視線が恥ずかしくてたまらない。
 は白い頬をこれ以上ないほど真っ赤に染めて俯き、立ち止まってしまう。
 そんな彼女が愛しくて、不二は色素の薄いの瞳を細めた。
、顔を上げて?」
「…いや。へんな顔してるもの」
「そんなことないよ。 僕はのどんな顔も見たいんだ。だから、僕にだけ見せて」
 囁きに似た甘い声は耳に届いたのと同時に、顔に彼の右手が伸ばされた。
 不二はしなやかな指での顎に触れ、そっと持ち上げる。
「ほら、やっぱり可愛い」
 瞳を細めて微笑む不二にの赤く染まった頬が更に赤くなっていく。
 いつのまにか不二に出し決められていて動けない。
「…大好きだよ」
 不二はの唇に吐息がかかる距離で甘く囁いて、真っ赤に染まった柔らかな頬に触れるだけのキスを落とした。




END

【瞳の先に】本編は贈り物ページにあります。

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