瞳の先に 〜 Friend ver 〜




 夜空に無数の星が瞬いている。
 それをベランダから見上げながら、は小さく微笑んだ。
「ほんとによかった」
 陽が落ちて空が藍色に染まる頃。携帯に電話がかかってきた。
 電話をしてきたのは彼女の親友だった。

「ありがとう、

 その一言だけで全てわかった。
 が彼――不二とうまくいったのだ、と。
 それは確信があってのことで、だからこそ不二に頼んだ。
 確信がなかったら、動かなかった。
 大切な親友の笑顔を曇らせたくないから。



「そういえば、は不二君にチョコあげるの?」
 去年の冬。学校からの帰り道で言ったことがあった。
 もうすぐバレンタインだからチョコをあげるんだろうな。
 そう思って訊いただけだった。
 けれど。
「どうして…どうして私が不二くんを好きって知ってるの?」
 の唇から零れた言葉には胡桃色の瞳を瞠った。
 気がついていなかったのだろうか。
 黒曜石の瞳はいつも誰かを追っていて、その先にいたのはいつも不二だった。
 一緒にいることが多いから、すぐに気がついた。
 それにも自分が気がついているとわかっていると思っていたから、驚いた。
って不二君を見た時とか嬉しそうにしてるから、すぐにわかったわよ」
「えっ!?じゃ、じゃあ不二くんも気づいてたりするかな?」
 泣き出しそうに顔を歪めるは慌てて首を横に振った。
 泣かせようと思って話題にしたわけではないのだ。
 話題にしたのはちゃんとした根拠がある。
 彼はおそらく、という外れていないだろうと思うところがあるのだ。
 けれど確信のないことを口にできない。
「それは大丈夫だと思う。不二君のへの態度は変わってないように見えるし」
 少しの嘘を混ぜた、を安心させるための言葉を唇に乗せた。
「言われてみればそうかも。よかった」
 は安心したようにほっと息をついた。



「あれから二ヶ月経ったのね」
 ぼんやり思いを馳せていると、部屋からメールの着信を告げる音がした。
 ベランダから部屋の中へ戻り、音の止んだ携帯を手に取る。
 着信したメールを読んだは春の日の木漏れ日のように微笑んだ。
「ふふっ。不二君じゃないけど、って可愛い」
 その時のの顔が容易に想像できて、思わず笑ってしまう。
 なんて返事をしようかと少し思案し、は親友へメールを返信した。




END

【瞳の先に】本編は贈り物ページにあります。

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