リビングの座り心地のよいソファに並んで座り、テレビでテニスの試合を見ていると、不意に左肩に重みがかかった。
 重さの正体は見ずともわかるが、どうしたのだろうか、と国光は隣へ視線を滑らせた。
 恋人の頭が、甘えるようにそこにある。
 数瞬迷ったのち、国光は左腕を恋人の肩に回し、そっと抱き寄せた。わずかに増す重みが心地よい。
「国光…」
「なんだ?」
「大好き」
 テレビから流れてくる解説者の声や会場の歓声は、彼女の声が耳に届いた瞬間に遮断された。
「俺は…」
 を愛している。
 恋人の耳元で囁くように告げて、彼我を縮めた。



BACK