かすれた声で呼ばれたら



 部屋のソファに座り、コーヒーを飲んでいるところだった。
 無言でじっと見つめてくる恋人の視線を感じ、景吾はコーヒーカップをソーサーに戻した。
「なんだ?」
 景吾は切れ長の瞳をに向けて訊く。
「整った顔よね」
 の言葉に景吾は片眉を上げた。
「そこは素直にカッコイイと言えばいいだろうが」
「景吾はカッコイイと言うより、近寄りがたい美男、て感じ。あ、見た目だけよ。俺様なのはわかってるから」
 言って、はクスクス笑う。
「それで誤魔化したつもりか?」
 フッと口元に微笑をたたえ、景吾はの腕を引き、華奢な体を抱き寄せた。
「これで誰よりもお前が俺に一番近いな」
「け――っ」
 唇に落とされた熱いキスに声は封じられた。
 甘く、深く、唇が重なる。
 一呼吸のできる鼻で息をするのを忘れ、キスから解放された時には息が上がっていた。
「…っ、け…ご…」
 かすれた声で名を呼ばれ、景吾は再び彼女に口づけた。
「ん…っ」
 キスの合間にこぼれる吐息が俺の熱を上昇させる。
 お前は気が付いていないだろうが、な。
 景吾は胸中でつぶやき、キスを終わらせると華奢な体を横抱きに抱え上げた。
 バスローブの足元が肌蹴て白い脚があらわになる。
「…っ、け…いご…っ!」
「あれでも手加減した」
「っ」
 彼女の顔が真っ赤に染まる。学校ではクールだと言われる彼女のこんな顔が見られるのは、自分だけだ。
 その顔を隠すように景吾の胸にうずめる彼女の絹糸のような髪はまだかすかに濡れていて、景吾の髪と同じ香りがする。
「…無意識にあおってくれるな、お前」
 手加減できないぜ、との耳元で熱を帯びた声で囁き、寝室へ続く扉を開けた。



END


微エロなお題[04. かすれた声で呼ばれたら]
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