とける意識で聞いた言葉




 閉ざしたカーテンの隙間から、朝日が部屋の中へ忍び込んでくる。
 その眩しさを閉じた瞼の裏で感じて、リョーマは瞼を押し上げた。
 見慣れない天井が瞳に映る。
 そうか、ゆうべは――。
 胸中で呟きながら、左腕のほうへ視線を向けた。
 かすかな寝息をこぼす顔が目の前にあった。
 白い首筋に残る赤い跡は自分がつけたものだ。
 今は見えないが、胸元やお腹、そのほかの場所にもついているというか、つけてしまったというか。
 とにかく愛しくて、どうしようもなかった。

 彼女の――昨日妻となったばかりの人の名をそっと呼ぶ。
 応えはなく、規則正しい寝息が聞こえる。
 リョーマは上半身を起こして、の額へ羽が触れるようなキスをした。
 を起こさないようにベッドから出て、バスルームへ足を運ぶ。熱いシャワーを頭から浴びて目をしっかり覚まし、バスローブを着るとベッドルームへ戻った。
 ベッドに腰かけ、の顔を覗き込むようにして、リョーマは妻の名を呼んだ。
 先程と同じく、応えはない。
 リョーマがベッドにあがると、スプリングがきしむ音がした。
「ん……」
「朝だよ、
 まさか自分がを起こす日が来るとは思わなかった。
 起こしてもらうのはいつも自分で、彼女は起こしてくれるほうだった。
 おかしくなって、リョーマは小さく笑った。
 ゆっくり瞼が上がり、黒い瞳がリョーマの顔をとらえる。
「リョーマくん?どうして…?」
「愛してるって何度も言ったじゃん」
 耳の奥で熱を含んだ甘い声が蘇る。
 とける意識の中で何度も聞いた言葉。
 状況を把握した途端、恥ずかしくなって布団を引っ張りあげようとした。けれど、リョーマが布団の上にいるため少しも動かず、顔を隠すことができない。
「隠れられたらキスできない」
「っ、リョ――」
 深く口づけて彼女の吐息を奪う。
 苦しそうな声が聞こえたころ、リョーマはようやく唇を離した。
「…ねえ、もう一回していい?」
「も、もう朝よ」
「明るいほうがの顔が見えていい」
「そっそういうことじゃ……」
「なら――」
 夜までなんて待てないって言えば、抱いていいの?
「リョ、リョーマくんのエッチ」
「しょうがないじゃん。が欲しいんだから」
 愛してる、と甘く囁いて可憐な唇へ口づけた。



END



微エロなお題[10. とける意識で聞いた言葉]
恋したくなるお題(http://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/)


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