勝利の女神

 

 

「不二先輩いますか?」

 昼休みが半分くらい過ぎた頃、3年6組の教室の扉を開けてそう言った。
 すると、 先輩の親友の 先輩が俺の所へやってきた。

「あれ、越前くんじゃない。不二君ならいつものトコロよ?」

 いつものトコロって言われてもね。
 俺はこのクラスじゃないんだけど?
 学年も違うしね。
 でも、先輩はそれには全く気付いてないみたいだ。
 全く。仕方ないね。

「いつものトコロってどこ?学年もクラスも違うから分からないんだけど?」

 呆れたようにそう言うと、 先輩は苦笑して。

「そうよね〜。ごめんごめん。不二君は と屋上よ」

「そうっスか。どーも」

 軽く頭を下げて礼を言うと、俺は屋上に向かった。

 屋上へ行く途中、廊下で部活の先輩に会った。

「あっれ〜おチビじゃん。どこ行くにゃ〜?」

 菊丸先輩が俺の背中にのしかかりながら、そう言った。

「重いっスよ。菊丸先輩」

 そう言って睨み付けると、先輩はにゃははと笑って。

「ごめんにゃ。で、どこ行くの?」

「屋上っス」

 そう答えると、菊丸先輩は頭をブンブンと横に振った。
 先輩は俺の両肩をガシッと掴んだ。
 そして。

「ヤめなっておチビ〜。不二に消されちゃうにゃ〜」

「なんで俺が消されないといけないんスか」

「不二は ちゃんと一緒にいるんだぞ。邪魔したら恨まれるにゃ〜」

「大丈夫っスよ。 先輩が一緒なら」

「なんで!?」

「不二先輩の弱点は 先輩ですからね」

 そう言うと、菊丸先輩は両腕を胸の前で組んだ。
 何か考えているみたいだけど、待ってる時間がもったいないから、菊丸先輩を放って歩き出そうとした。
 すると。

「じゃ、俺も一緒に行くにゃ〜」

「え!?なんでそうなるんスか!」

「まぁまぁいーじゃん。それじゃ〜レッツゴー!!」

 強引について来ようとする菊丸先輩をとめるのも面倒だったから、渋々俺は先輩と二人で屋上に向かった。

 

 重い鉄の扉を音がしないように開けると、風に乗って小さな声が聞こえた。

「・・・・・・なんでしょ?」

「うん。・・・は不在だから・・・・・・」

  先輩と不二先輩が何やら話してるけど、よく聞こえない。
 二人の会話が気になって、俺たちはもう少し二人に近付くことにした。
 もちろん死角を狙って。

「立海大との試合は来週よね」

「うん」

「私、周くんの応援に行くからね」

「どうしたの?改まって。いつも僕の試合を応援しに来てくれてるじゃない」

「うん。でも立海大は強いでしょ?だから…」

「僕は負けないよ。立海がどんなに強くてもね」

「周くん…。私たくさん応援するから。
 なにもできないけど、周くんのコト信じてる。だから、頑張って」

「ありがとう。

 不二先輩はそう言うと、 先輩を抱き寄せた。

「…にゃろう」

「おチビ出過ぎだって〜。見つかるにゃ〜」

 菊丸先輩が唇に人さし指を当て、そう言った。

「分かってるっス」

 不二先輩たち以外に人がいないからって、校内でラブシーンをやるか?
 油断も隙もない。
 だけど、俺たちがいるなんて分かってないから、ラブシーンはまだ続く。

「立海は確かに強い。でもね、 がいてくれるなら、 の応援があれば、僕は強くなれるんだ」

「ホント?」

「うん。 はね、僕の勝利の女神だから」

「勝利の女神?」

「うん。僕だけの勝利の女神、だよ」

 不二先輩はそう言うと、 先輩の唇に人さし指を這わせた。

「ねぇ、 。女神からキスしてくれる?僕が勝てるように」

 な!?いきなり何を言い出すんだ。この人は。
 だいたいさっきからどうしてこうも歯の浮いたセリフばかり言えるんだ?
 そんな事を思っていると、 先輩が頬を赤く染めて口を開いた。

「恥ずかしいから、目を瞑って?」

「クスッ。……これでイイ?」

 目を瞑った不二先輩の唇に 先輩の桜色の唇が重なった。
 それを見た瞬間、俺の視界は真っ暗になった。
 どうやらキスシーンに動揺した菊丸先輩が俺の頭をギュッと掴んだらしい。
 そのせいで、俺に聞こえたのは二人の声だけ。

「勝利のキス、確かに受け取ったよv」

「……うん。勝ってね、周助」

「ああ。約束するよ」

 それきり二人の声は聞こえなくなった。
 けど、その変わりに俺の耳に届いたのは一一一

「……ん…っ…ん、んぅ……ッんん」

 艶やかな 先輩の呼吸だった。

 

 やっぱり屋上なんてこなければよかった。
 心の底から後悔するハメになったのは、わずか数分後だった。


 



 

 


END

 

越前「綾瀬」
綾瀬「なに?」
越前「なに?じゃないよ。アンタ俺の扱いが酷くない?」
綾瀬「そう?手加減してあげたじゃない」
越前「全然してないよ」
綾瀬「してるよ。ホントなら周助くんに弄られる予定だったし」
不二「クスッ」
 越前&綾瀬「わっ!?なんでここに?」
不二「知りたい?それなら教えてあげるよ。越前?」

という訳で、好奇心旺盛な さん、コチラへどうぞv
周助くんも喜んでくれますよ。クスッ。

 

HOME