そうして不二に連れられて着いたのは、プラネタリウムだった。

「ここって全フロアがプラネタリウムなのよね?」

 以前、何かの雑誌で目の前に建っているビルの写真を見たことがある。
 どのようなプラネタリウムなのか、外見からはわからない。
 けれど、その雑誌には、三階建てのビルの全てのフロアがプラネタリウムだと書いてあった。

「うん、フロアごとにプログラムが違うんだ」

「それはすごいわ」

 思わず感嘆の溜息が零れる。
 ビルのワンフロアだけがプラネタリウムで、残りのフロアは違うというのが普通だ。
 そしてプログラムは1つで一定期間上映し、それから内容が変わる。
 2つ以上のプログラムなら、一日のうちにローテーションか、あるいは日々交互に上映だろう。

 中に入ろうと不二に促され、ビルの中へ入った。
 休日だけあってそれなりに混んでいる。 

、何が見たい?」

 チケット売場の手前にある、案内板の前で二人は足を止めた。
 銀河の写真を背景にしたポスターに、上映プログラムの案内が書いてある。
 一階では6月の星空散歩、二階では夏の星座と星空、三階では天の川と銀河、というプログラムをやっているらしい。
 それぞれのプログラムには簡単な説明文がついている。
 上映時間、上映開始時間はどれも同じだった。
 はこれがいいかな、と思うものを決めたが、不二にも意見を訊くことにした。

「周助は?」

「僕はと見られるならどれでもいいよ」

 首を傾けてにっこり笑う不二に、の白い頬がかあっと赤く染まる。
 嬉しくて、けれど照れるセリフをサラリと言うのだろう。
 どれでもいいよ。
 これが不二以外の人の言葉なら、その言い方って何?と言ってしまいそうだ。
 それなのに不二の口から聴くと違う印象を受ける。その理由は不二だから、不二が好きだから、だ。

「…夏の星座と星空がいい」

「うん。じゃあチケットを買って二階へ上がろう」


 そうして二人は、ドームいっぱいの360度に広がる美しい星空と星座にまつわる神話を一時間ほど堪能した。

「すごいキレイだったわね」

 余韻に浸るように、が黒い瞳を細める。
 プラネタリウムは数年振りだったのだが、やはりとても楽しかった。

「そうだね。他のも見てみたくなるね」

 他のプログラムも機会があったら見たいなと思っていたので、は頷いた。

「ええ。また来たいわ」

「うん、また来よう」

 約束を交わして、二人は微笑み合った。


 昼には少し早い時間だったが、ピザが美味しいイタリア料理店に向かった。
 そこで先ほど見たプラネタリウムの話や食べている料理の話などをしながら、食事をゆっくり楽しんだ。


 そして店を出た二人は――。 




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