君の隣
赤く色付き始めた木の葉が風でカサカサと音を立てる。
まだ本格的ではないが、暦の上で季節は秋と言われる時期。
窓際に近い席に座り、締め切りが迫っている仕事を片付けていた は、思いつめたように重い息を吐き出した。
別に仕事に飽きたわけでもなく、進んでいないわけでもない。
どちらかと言えばかなり順調で、このままのペースで片付けていれば今日中に仕上がるだろう。
だから、原因は仕事ではない。
のため息の原因は、今度の日曜日のことだ。
4日後の日曜日、10月10日は の誕生日で、恋人と過ごすことになっている。
二人きりでゆっくり過ごせるのは二週間振りなので、 はとても楽しみにしている。
けれど恋人との年齢差を考えると、あまり素直に喜べない。
自分と同い年かそれよりももっと上の年齢の男性が恋人であったなら、こんな悩みは持たなかったかもしれない。
けれど、彼女の恋人は年下で、いま高校三年生だ。
誰しも誕生日があるのだから、どれほど時が流れようと年齢差が縮まらないことはわかっている。
だから、自分の考えが不毛だと言うことも理解している。
でも、それでも、嫌なものは嫌なのだ。
なぜか恋人との距離が離れて行くような気がして、不安なのだ。
彼に面と向かって言ったりはしないけれど、時折こうして不安にかられる。
それだけ自分にとっての彼の存在が大きいということもわかっている。
は不安を打ち消すように、緩く首を振った。
気分転換をするためにコーヒーを淹れようと席を立とうとした。その時、デスクに置いてある携帯が震えた。
仕事中は音が鳴らないようにしてあるので、メールか電話かはわからない。
緑色に光るディスプレイを見ると、メールが着信していることを告げていた。
届いたメールを開く。
そしてメールの差出人を確認した はふっと表情を和ませて、微笑を浮かべた。
差出人は の恋人―――
不二周助 跡部景吾 観月はじめ
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